少女機械人形コーパス 第二幕
同日
午後04時40分
地底都市マヌス 旧墓地
その手にナイフを握りしめ東堂は立ち尽くしていた。
東堂
「…ふぅ。」
一呼吸おくと、ゆっくりと自分の手首にナイフを当てる。
野柳
「おやおや随分と前時代的な死に方だねぇ。」
東堂
「?!」
野柳
「やぁ、気分はどうかな?」
東堂
「…最悪ですよ。」
野柳
「そう。じゃあ良くしてあげよう。」
東堂
「なっ?!」
野柳
「ほんの親切心だよ。」
冷たい微笑をたたえながら、野柳がその左手をスッと上げるとその背後に従っていた研究員達が一斉に東堂の元へとむかう。
東堂
「やめろっ!触るな…!」
東堂は逆らおうと抵抗したが、それも虚しく数人の男達に軽く取り押さえられてしまった。カランという渇いた音を立て、その手からナイフが零れ落ちる。
野柳
「怯えなくてもいい。私の好意だよ、ありがたく受け取ってくれ。」
言うなり野柳は東堂の首筋に注射器の針を刺し、中の液体を投与した。
東堂
「!」
一瞬体を大きく震わせ、瞳孔を開きながら野柳を睨みつける東堂であったが、次の瞬間には言葉もなくその場へと崩れ落ちていった。
野柳
「全く、手間のかかる子だね。さ、連れてってくれ。」
研究員
「はっ。」
東堂の体を白い布で包みこみ、研究員達はその白い荷物を旧墓地から運び出した。
野柳
(さて、土方君は上手くいったかな。)
作品名:少女機械人形コーパス 第二幕 作家名:有馬音文