少女機械人形コーパス 第二幕
1月22日
午前10時25分
地底都市マヌス Cエリア 居住区
821号室前
花立
「のぞみーん、いるーー?」
ピンポンピンポンピンポーン<SE>
花立
「おーい、のぞみんー!いないのー?」
ピンポンピンポンピンポーン
花立
「いるー?いるよねー?居留守はよくないわよー。」
ピンポンピンポンピンポーン
ウィィィン<SE>
佐路
「もうっ!騒々しいですわよ!ご用件はなんなんですのっ。」
佐路望美―Nozomi Saji― 13歳。
愛犬のサンディと共にCエリアで暮らしている。地上では裕福な家庭に育っていたが、ヴィロネカート襲来時に彼女の両親が死亡した事から、当時の混乱に乗じてあらゆる資産を奪われ、残されたのは子犬のサンディだけだった。幼少時よりサンディだけを心の支えにしCエリアで暮らしていた為、他人に対する警戒心が人一倍強い。
花立
「おーっ。こんにちは。やっぱいるんじゃない。」
サンディ
「ワンッ!」
佐路
「…なんですの。」
花立
「あーっと…お醤油貸してくんない?」
佐路
「ありません。」
花立
「えっ、自炊とかしないタイプだっけ?」
佐路
「そういう事は言ってません!それより、花立さんは今日からコーパスの居住区にお引越しなさるんじゃなかったんですか?」
花立
「そうなんだよねー。せっかくのぞみんと同じ区画だったのに、残念。」
佐路
「そうですか。」
花立
「またまたぁ、そんなクールを装ってもホントはのぞみんも寂しいんでしょ?」
佐路
「のぞみんっていうのやめて下さいっ。」
花立
「いいじゃない。可愛いんだから、のぞみん〜。」
佐路
「全く…あなたという人は。」
花立
「ん?」
佐路
「…わたくし、いつまでもこんな所にいたくありませんの!」
花立
「?」
佐路
「だから…とっととヴィロネカートを倒して、わたくしに地上を見せるといいですわっ!」
花立
「ぷっ。はいはい。」
佐路
「……怪我しないように、気をつけるんですのよっ。」
花立
「ん。サンディも元気でね。」
サンディ
「……クー。」
花立
「最後まで愛想のない犬ねー。」
佐路
「サンディはわたくし以外には決して心を開かないんです!そこが可愛いんですの!」
花立
「あぁそう。で、のぞみんもサンディ以外に心開かないわけ?それって寂しくない?」
佐路
「寂しくなんかありません!わたくしにはサンディさえいれば…それでっ。」
サンディ
「ワンッ!」
花立
「そっか。ならいいけど。じゃ、私行くわ。」
佐路
「……。」
花立
「お休み貰えたら、またこっちに戻ってくるから、そん時はよろしくー。」
佐路
「…お醤油用意しといて差し上げますわっ。」
花立
「あはは!うん、いつ借りに来てもいいようにしといてねー。」
佐路
「上等ですわっ。」
花立
「ん、それじゃ。」
佐路
「行ってらっしゃいまし。」
花立
「行ってきます。」
作品名:少女機械人形コーパス 第二幕 作家名:有馬音文