少女機械人形コーパス 第二幕
同日
午後05時30分
コーパス 第三療養所
12号室
土方
「具合はどう?よう子ちゃん。」
巳上
「あ…土方さん…。」
土方
「変わりなさそうね。」
巳上
「はい…。あのっ。」
土方
「何かしら。」
巳上
「健二くん、最近全然来てくれないけど、何かあったのかな…。」
土方
「ふふっ。子供の相手なんかしてられなくなったんじゃないかしら。健二君はもう大人だから。」
巳上
「…嘘。健二くんはそんな子じゃないもん。」
土方
「そう?じゃあどうして来てくれないのかしら?」
巳上
「それは…。」
土方
「ん?」
巳上
「よう子には…分からない…けどっ!」
土方
「ふふっ。そうね、よう子ちゃんにはちょっと難しいわよね。ふふふっ。」
巳上
「……。」
土方
「さあ、薬を飲みましょう。」
巳上
「いや、飲みたくない。」
土方
「そんな我侭言うから、健二君に嫌われるのよ。」
巳上
「っ!」
土方
「健二くんに会いたいんでしょう?だったら飲みなさい。ちゃんと飲めたら、あなたがいい子にしてるって伝えておいてあげる。」
巳上
「…ほんと?」
土方
「えぇ、本当よ。大人は嘘をつかないの。」
巳上
「飲む。」
土方
「そう、いい子ね。」
巳上
「ごくんっ。」
土方
「ふふっ。早く治るように一緒に頑張りましょうね、よう子ちゃん。」
巳上
「…うん。」
土方
「良くできました。それじゃ、私は健二君と約束があるから。」
巳上
「えっ!」
土方
「ふふっ。大丈夫、あなたの事はちゃんと伝えておくから。」
巳上
「待って!よう子も行く!」
土方
「ふふっ、またねよう子ちゃん。」
巳上
「待って!お願い!」
土方
「さよなら。」
ウィィィン<SE土方消>
土方を追いかけようと巳上は急いでベッドから飛び降りたが、無情にも扉は彼女の眼前で閉じられた。
巳上
「お願い!お願い待って!ゴホッ!ゴホゴホッ!」
<SE壁叩く音等>
巳上
「開けて…開けてよぉ…ゴホッコホッ。」
力無く扉を叩く音だけが虚しく響く。
巳上
(お薬ちゃんと飲んでるのに…どうしてこんなに苦しいの…っ。)
巳上
(健二…くん……。)
作品名:少女機械人形コーパス 第二幕 作家名:有馬音文