少女機械人形コーパス 第二幕
花立
「やった?!」
確かな手ごたえに花立が微笑さえ浮かべたその時、野柳
『違う!まだだ!』
花立
「え?」
作戦本部からの声に緩みかけた気を引き締め敵を確認する。
だが確かにヴィロネカートのコアにはBナイフが深々と突き刺さっていた。その赤い球体にはヒビが入り、今にも割れ朽ちそうだ。花立は改めて勝利を確信した。
<<アァァァァァァァアアアァッァァァッァァァァッッ!!>>
再び金属音が鳴り響く。
その音共にヴィロネカートの体の全てが白い触手に変わり、デーケルターレの体を捕え、その肉体の上をあたかも無数の蟲のように這いずり回る。
花立
「なっ!」
神経ブロックが伝える体中を蟲と化したヴィロネカートに這われる凄まじさ。しかしその嫌悪以上に恐ろしいものが次の瞬間襲いかかった。
花立
「ぃっ!」
花立は小さく悲鳴をあげた。体中に張り付いた蟲となった細胞群は今や蛭のようにその体液を吸い出そうと食らいついてくる。
デーケルターレの装甲は蟲達の発する熔解液に溶かされ、むき出しとなったデーケルターレの肉に直接蟲達が貪りつく。
花立
「あっああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁっ!」
たまらず悲鳴を上げ、Bナイフから手を離す花立。
体中を掻き毟り蟲どもを必死に駆逐する。しかし、数では勝る蟲達の攻撃に追いつく事が出来ない。
野柳
『自己を防衛する感情が働いているのだ。ヴィロネカートのコアはあと少しの衝撃で破壊されるだろう。だが…。』
土方
『敵は死に物狂いでくると…いう事ですか。』
尾ヶ崎
『花立さん!』
花立
「いやっいやぁぁぁぁああああぁぁぁあ!」
デーケルターレのコクピットの中、彼女の腕は足は血を吸われ干からびていく。瑞々しさは消え皮膚は皺となり広がっていく。
老婆のような自分の両手を見て花立は涙した。
花立
「いやっ…いやぁ…っ!」
作品名:少女機械人形コーパス 第二幕 作家名:有馬音文