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てっしゅう
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「夢の続き」 第六章 伊豆旅行

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「佳代さん!貴史です。電話待っていたんですよ。日にち決まりました?」
「まあ、急がせるのね。それよりあなたの作文、コンクールで優秀賞だったんですってね。聞きましたよ。おめでとう、頑張った甲斐があったわね」
「ありがとうございます。おばあちゃんに聞いたの?」
「ええ、そうよ。とっても喜んでみえたわ」
「俺も正直びっくりしているんですよ。頑張ったなあって言う実感はありましたけどね」
「素敵だわ。真一郎さんもきっと喜んでいるわね」
「うん、嬉しい」
「10月の連休に伺おうと思っていますの。9,10とね。都合いいかしら?」
「ちょっと待ってね・・・父さん!来て」
秀和と電話を代わった。
「佳代さん、秀和です。ご無沙汰をしております。お元気でしたか?」
「秀和さん!ええ、元気でしたよ。貴史さんのお陰で元気を貰えましたの。私たちは女三人暮らしでしょ、貴史さんが来てくれてとても嬉しかったですのよ」
「それは良かった。いつお見えになるんですか?」
「貴史さんに言いましたけど、10月の9と10でと思っておりますの。ご都合宜しいでしょうか?」
「ええ、空けておきます。貴史とも相談したのですが、みんな揃って伊豆にでも行こうかと考えております。東京駅にお迎えに行きますので、そのつもりでお越し下さい」
「そんな・・・ご無理をお願いするようで申し訳ないですわ」
「大丈夫ですよ。任せてください。貴史が幹事になりますから、なあ?」
「俺が?」
「やると言っております。ご安心下さい」
「ではお言葉に甘えて・・・楽しみしております」

貴史は洋子を呼ぶ話をしないといけなくなった。さて、どう切り出すか思案していた。

学校ではオリンピックの話題が中心になっていた。鈴木大地選手の背泳が金メダルになったときは大騒ぎだった。日本の水泳にとってそれは悲願だったからである。スタートしてどの選手よりも長く水中から出てこなかったバサロ泳法が後に禁止になったことでも彼の非凡さが伺える。

学校からの帰り貴史は洋子を誘った。
「なあ、ちょっと話しがあるんだけど付き合ってくれないか?」
「いいよ。どうする?私の家に来る?」
「構わないけど・・・しないよ」
「バカ!私は淫乱じゃないわよ」
「そういう意味じゃないよ。落ち着いてしたいからね」
「あなたの方がやらしいじゃない」
「まあ、お互い様だよ。俺はむらむらしたら自分で出来るからいいけど、お前はどうしているんだ?」
「変態!そんな事聞くな」
「ハハハ・・・怒った顔もたまにはいいな。洋子はどんな時でも可愛いよ」
「変な褒め方しないでよ。嬉しくなんかない」
「そうだ、洋子のお母さんにも話したいことがあるから家に居る?」
「多分ね。何話すの?」
「お嫁に下さいって・・・言おうかな」
「冗談が過ぎるわ!まじめに答えてよ」
「ゴメン、岡谷の佳代さんたちが来月来るんだよ。それでね、家族みんなで伊豆に行こうとなって、洋子も誘いたいんだけど両親の手前お母さんも一緒ということにすればOKかなって考えたんだよ」
「来られるの!そう・・・お会いしたいわ。そうね、厚かましいけどご一緒出来れば嬉しいわ」
「そうしよう!おばさんに頼んでみるよ」

貴史は洋子の母親由美にいきさつを全て話した。
「貴史さんお気遣いありがとう。あなたのご両親が宜しければご一緒したいですわ。洋子は行きたいでしょうから」
「そうですか、良かった。俺の親は反対はしませんよ。おばあちゃんが俺の肩持ってくれますから」
「そうなの。じゃあ、よろしくお願いします」

秀和と美佐子は幼友達の洋子が来ることに反対はしなかった。話はまとまって三家族、9人で伊豆に旅行することが決まった。

10月の9日がやって来た。東京駅の東海道線ホームで貴史たちは佳代と美枝が来るのを待っていた。洋子と並んで着く列車の乗降客を見渡していた貴史が二人の姿を見つけた。

「佳代さ〜ん、美枝さ〜ん、こっちだよ!」
佳代は呼ぶ声に気が付いて手を振った。重そうな荷物を手に下げていたので走り寄って自分の手で持った。
「貴史さん、悪いね。重たいでしょう?お土産を買ってきたものだからバッグがいっぱいになっちゃって」
「いいですよ。男ですから、このぐらい平気です。それより、今日はありがとうございました」
「何言ってるのよ、こちらこそお礼を言わなくちゃ」

千鶴子は懐かしい目で佳代と美枝を見つめていた。

「千鶴子さん、お久しぶりです」
「佳代さん、美枝さん、本当に・・・今日は嬉しいわ」
そっと目頭を押さえた。
「秀和さん、ご無沙汰をしておりました。覚えてらっしゃいますか?」
「はい、おぼろげですが記憶しております。もう40年以上経ちますね、岡谷から東京に来て。美枝さんには本当に可愛がって頂きましたから」
美枝は美佐子に頭を下げてから、秀和と視線を合わせた。
「お互いに歳をとりましたね。あの頃は良く遊びましたから。懐かしいですわ。奥様お綺麗な方でよろしかったわね」
「いやあ〜ありがとうございます。恥ずかしいですね、そう仰って頂けると」

「父さん!皆を紹介しないと・・・」
「そうだな。こちらに居るのが貴史の姉恵子です。妻の美佐子と貴史の幼馴染、栗山洋子さんとお母さんの由美さんです」
「始めましての方もいらっしゃいますので、岡谷から来ました百瀬佳代と言います。隣は長女の美枝です。千鶴子さんの古い知り合いです。今日は秀和さんのお言葉に甘えさせていただくことになりました。よろしくお願いします」

挨拶が終わってから、伊豆に向かう列車を待っている間、貴史と佳代が話をしていた。
「貴史さん、今日は本当に良かったのかしらね?」
「みんな歓迎しているよ。俺とおばあちゃんのゴリ押しじゃないから気を遣ってくれなくてもいいですよ」
「そうなの。それなら嬉しいけど」

佳代は貴史の顔を見ていると、真一郎のことが思い出される。しばらく振りに見てそう強く感じた。

美枝は洋子の母親と話をし始めた。
「初めまして、美枝です」
「はい、由美です。初めまして。洋子がお世話になりました」
「その話は、今はなしと言うことで」
「えっ?そうなんですか」
「貴史さん内緒にしてらっしゃるので」
「そうでしたか。解りました」
「素敵なお嬢様ですね。他にお子様はおられるのですか?」
「いえ、一人だけです。本当はもう一人欲しかったのですが、この子を生んだ後に体調を壊しまして、なんだか二人目の自信がなくなってしまったんです」
「そうでしたの。私には東京に結婚した長男が居りますの。あと一人娘がおりますが、まだ家に居ります。もういい年なんですが、なかなかご縁が無くて困りますわ」
「男の子が居るのは羨ましいですね。私は洋子がお嫁に行ったらと考えるとなんだか寂しく思ってしまうんです。この子に負担が掛からないようにとは思ってはいますが・・・」
「そうでしょうね。一人はお寂しいでしょうね。大丈夫ですよ、きっと貴史さんが一緒に暮らしてくれますよ。そうでなければ私のところへ来られませ。女ばかりなので気楽ですよ」
「それは心強いことです。貴史さんは家族思いですし、おばあちゃん思いですから、私などは・・・」