小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

夏風吹いて秋風の晴れ

INDEX|67ページ/94ページ|

次のページ前のページ
 

そんな直美と俺だった


「よし、わたしもぉー」
直美もロケット花火をすばやく手にして、火をつけていた。直美の持った花火の先から、勢いよく閃光と、大きな音が夜空に連続して飛んでいた。綺麗な軌跡を光が描いて、教会の庭を明るく照らしていた。
「なにしてますのぉー あんさんまでぇー」
2階の窓から身を乗り出して怒った声をだしていたけど、ステファン神父の顔はうれしそうだった。
「叔母さんも叔父さんも、やっちゃいますか?残り2本だし、それにもう怒られちゃったから、いいでしょ?」
子供みたいなうれしそうな顔で、直美が花火を叔母と叔父に強引に手渡していた。
「よし、やっちゃうか?」
叔父が、叔母にうながして、直美がすぐにマッチを擦って、二人の花火に火をつけていた。
叔父は、
「おつ、おおぉー」
ってわけのわからない声を出しながらうれしそうな顔をみせていたし、
叔母は、
「あっ、あら、あらっ」
って声をだして、必死にその花火を握っていた。それでも、そんなことはお構いなしに、ロケット花火は夜空に向かっていくつもの光を放っていた。
「ええかげんにしなはれや、まったく・・・」
呆れ顔でステファンサンは庭の俺たちに文句を言っていた。
それを聞いた、直美が、
「ステファンさーん、ご近所さんから文句言われたら、ご自分ですって、言ってくださいねぇー そうしたら、きっと誰もそれ以上は文句いいませんからぁー ステファンさん、人気者ですからぁー そういうことでよろしくでーす」
って、上を見上げてステファンさんに、大きな声をだしていた。
「直美はーん、あんさん、そこの劉と付き合い長くなって、そないなことを言うようになりましたんかぁー びっくりですわぁー」
「わたしが言わなくたって、ステファンさんは、ご近所さんにそういう風に言うのってしってますからぁー だって、ステファンサンとも、もう3年以上もお知り合いですからぁー」
「そう簡単にわてのことなんてわかりませんでぇー」
「はーぃ、これからもよろしくお願いしまーす」
「なに、言うてますの・・いいかげんにして 家にかえりなはれやぁー わかりましたなぁー あんさんらぁー」
諭すように俺たちにで、それに答えた直美の
「はーぃ。おやすみなさい」
って声に、最後はステファンさんは呆れ顔で、窓をしめて部屋に戻っていた。
ずっとやり取りをしていた直美の顔は笑顔だったし、それを見て、聞いていた、俺たち3人も笑顔だった。
「あっー、弓子ちゃん見てたぁー?」
直美が、叔母の家の洋館の2階の窓に向かって声をだしていた。
「花火、もう少しあるから、降りてきなぁー 純ちゃんも起きてたら連れておいでぇー」
直美の元気な声が、火薬の匂いの中で大きく響いていた。
「はぁーい、今いきまーす」
弓子ちゃんの声もこっちに届いていた。
ロケット花火の大きな音もクレームが来そうだったけれど、俺たちの会話もそうかもしれなかった。

すぐに弓子ちゃんはやってきていた。純ちゃんはもう、疲れて寝てしまったようで一人でやってきていた。
「はぃ、もう残り少ないけど、どうぞ」
直美が残った花火が入った袋を弓子ちゃんに渡していた。
「はぃ。久しぶりです」
「そう、わたしもだったよ、たのしいいよね。花火って・・・さっ、ちょっと、喉かわいちゃった、叔母さん、家に戻って麦茶もらっていい?」
「いいわよ」
「じゃぁー 劉と、ちょっと行ってきます。すいません。劉もいこう」
直美に手を握られていた。
「はぃ、叔母さんマッチです」
手に持っていたマッチを叔母に渡していた。俺は、直美に引っ張られるようにその場から足を動かしていた。3人を残してだった。
「よし、いいね、これで・・」
歩きながら直美に言われていた。
「うん、そうだな」
暗くて、ぼんやりにしか見えなかった直美の顔を見ながらうなづいて答えていた。
「今夜みたいな劉も大好きだよ」
「そっか、俺も今夜みたいな直美も大好きだよ」
直美に言われて、すぐにそう答えていた。つながっていた彼女の手に力を少しいれながらだった。もちろんだった。

それから、俺たちは黙って、洋館を後にしていた。もちろん仲良く手をつなぎながら歩いていた。

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生