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夏風吹いて秋風の晴れ

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どうにもしたくて


十字架に向かっていた叔父と叔母の顔は、なぜか、うっすらと微笑んでいるように見えていた。2人目の養女がやってきた晩に、亡くなった実の息子の墓の前で、にっこりなんて不思議なような気がしてたけど、俺にはそう見えていた。

「はぃ、叔母さんも叔父さんもどうぞ」
直美が袋から花火を出して叔母と叔母に渡していた。
「よし、俺もやろうっと。なんかすごいのないかなぁー どひゃーっての・・」
言いながら、大きめなのを探し出すと、それは地面に置いてそれに火をつけると上に向かって、花火が広がるものだった。箱には「ドラゴン」って書いてあった。
「よし、これ点けるね」
言いながら、直美から受け取った大きな箱のマッチを摺っていた。
すぐに大きな花火が広がっていた。綺麗ないくつもの色と、火薬の燃える音が響きだしていた。
「わぁー 綺麗ねー」
直美が口にすぐ出して、叔母もうれしそうに、
「綺麗ねー」
って相槌をうっていた。
叔父もそれをうれしそうに眺めて、俺に、
「それ、もっと無いのか?」って聞いて、俺が差し出した同じ花火をうれしそうに地面に置いて、火を点けていた。
すぐに、2つの花火が教会の庭を照らしていた。
初めのその花火が「ぼーん」って大きな音を出して最後に大きく火花を広げていた。
直美も、叔母も一瞬驚いた顔をしていたけれど、うれしそうな笑顔だった。
2つ目の花火も同じように最後に大きく火花を散らして、綺麗な光を教会のお墓の前を照らしていた。
詩音の、「うるさいっていうか、大人4人でなにをやってるんだか・・」って声が聞こえそうだった。
それからは、手に持つ花火を4人で、勝手に取ってそれぞれ楽しんでいた。いろんな色の光をだして、花火は俺たちの顔を照らしていた。
「あっ、これって、ロケットだ・・」
薄明かりの中で、ロケット花火を見つけ出していた。
「これって、点けたら、音でかいからダメだよね?」
直美に聞いていた、もちろん叔父さんや叔母さんにもだった。
「ひゅー ひゅー って音なるんだっけ?劉?」
「そそ、けっこう大きいと思う。近所中に聞こえちゃうかな」
「でも、見たいなぁー 1本だけしちゃう?」
「そう?」
「うん」
叔母と叔父はだまって俺たちの会話を聞いていた、きっと、どれくらいの音がでるのかを知らないようだった。
「叔父さんと叔母さんが明日、近所から怒られるかもしれないけど、いい?」
聞いていた。
「そんなにすごいの?」
叔母にきかれて、
「そんなでもないけど、それなり・・かな」
適当に答えていた。手に持っロケット花火に火をつけたくて、なぜかしょうがなかった。
「いいだろ、1本ぐらい」
叔父が口にしていた。
「じゃぁー いっちゃいますよ、いいですね」
火をつけると、大きな音を出しながら光を放っていた。俺が向けた教会の庭に放物線を描いていた、夜空に綺麗な光が流れていた。
それは、何回も大きな音を続けざまにだしながら いくつもの光の線を輝かせていた。
直美と俺と叔父と叔母がその夜空を眺めていた。
「なにしてますのやぁー あんさんかいなぁー」
教会の2階のステファンさんの部屋の窓からだった。
「あっ、すいません」
窓を見上げてちょっと、笑いながら謝っていた。
「なんや、あんさんやのーって、あんさんも、あんさんも、あんさんもですか・・」
全員に向かってだった。
あわてた叔母が、
「ごめんなさい、ステファンさん、こんなに大きな音がでるとは思わなかったから・・」
「部屋のなかでも、よー 聞こえましたで・・・その花火だけはやめなはれやぁー 」
「はぃ、すいませんでした、大きかったですよね、わたしもビックリしちゃいました」
叔母が2階の窓から顔を出していたステファンさんに、聞こえるようにすこし大きな声で謝っていた。
「まぁー 聖子はんは、気づかなかったんやからしゃーないとしても、そこの、劉は、音がでかいの知っててやりましたんや、そやなぁー あんさん、そうでしゃろ?」
「すいませーん 知ってましたぁー」
「そうやと、思ったわ。あんさん、小さい時もその花火、ここでようーやって、わてに怒られましたわなぁー おぼえてるんとちゃいますのかぁー」
「覚えてますよぉー だから、わざとでーす」
「やっぱりやわ、あんさんの考える事ぐらいお見通しですよってなぁー」
ステファンさんは、窓からだんだんと巨漢を外に出しながら庭の俺にだった。
でも、その口調は、いつもどおりの怒りかただったけど、顔は笑顔に見えていた。
「だってさぁー ステファンさーん、詩音もさぁー この花火大好きだったからさぁー。 いいでしょ、今夜はこれぐらいしてもぉー。酒もいっしょに飲めなかったから、花火ぐらい一緒にしたかったらぁー それも大好きな花火なら 詩音も喜ぶかと思ったからぁー」
大きな声をだしていた。
「あんさん あいかわらずの アホですなぁー」
言い返されていた。
「なので、もう1本だけね」
言いながらもう 花火に火をつけていた。
大きな音を続けざまに出しながら、いくつもの光の色が空を飛んでいた。
さっき数えたら10連発の花火だったから、5発目からは、詩音の十字架めがけてそれを放っていた。
不謹慎かもしれなかったけど、花火は詩音の十字架にあたって、光を四方八方に散らしていた。
「痛えーよ、こら」
って言うに決まっていた。

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生