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夏風吹いて秋風の晴れ

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二人っきりで


ゆっくり食事を済ませて、自転車を押しながら豪徳寺の商店街をのんびりと歩いていた。
直美も、俺もちょと顔を赤らめていた。
もちろんそれは日焼けしてたのもあったけど、ハンバーグを食べながら、少ないお財布の中身と相談をして、ビールをグラスに分けて飲んだからだった。一つのビールをを二人でだったから、酔うほどの量じゃなかったけど、なぜか、二人ともちょっと酔っているようだった。
マンションまでを、直美の「ふっー 暑いねぇー」って言うのを何度か聞きながらと、「雷なるぞぉー きっと」って俺が何度か空を見上げながら直美に言いながらだった。

「あっ、 電話鳴ってるよぉー 劉ぅー」
自転車のタイヤをマンション入り口で拭いて、5階の俺の部屋の中の廊下に自転車を入れていると、先に部屋の奥に入っていた直美に言われていた。
「でちゃっていいよぉー」
たぶん、電話は赤堤の叔母さんのような気がしていた。
「じゃやぁー とるよぉー」
直美が返事をして、受話器を上げているようだった。「はぃ、柏倉です」って声が聞こえていた。
部屋にあがって、直美の話している様子をうかがうと、やっぱり相手は叔母さんのようで、声を出さずに、「お・ば・さ・ん・?」って直美に向かって口を動かすと、話しながら「うん」って直美が無言で首を縦にだった。
暑くて、汗いっぱいのシャツを脱いでいると、話の内容は、叔母が夕飯を食べていけばよかったのにって話を直美にしていたようだった。
直美が、それに、草むしりをしたら疲れちゃったので帰ってきちゃいました、ごめんなさいって、感じで答えていた。最初は、野球見にいくからっていう内容の置手紙をしようかって話をしてたけど、めんどくさい嘘つくより、正直なほうがいいよってことで、その内容で置手紙をしてきていた。
裸で、クーラーの風を受けていると、電話を置いた直美がこっちに近付いて来て、
「ステファンさんも、教会に帰っちゃったんだって・・叔母さんが、今度ゆっくり遊びにいらっしゃいって、劉に伝えてっていってたよ」
「そっか、ステファンさんも帰っちゃったのか・・」
「そうみたい」
「めずらしいなぁー」
聖子叔母さんの家に遊びにいっては、夕飯を食べていたステファンさんにしては、すごーくめずらしいことのような気がしていた。
「着替えちゃうね、わたしも・・あっ、そのままシャワーを先に浴びちゃってもいい?」
直美が、まだ涼しくなってない部屋で暑そうな顔をしながらだった。
「いいよー 俺はこのまま、ちょっと涼むから」
「劉さぁー いいけど、風邪ひかないでよね、裸になんかなっちゃって。わたしが出たら、すぐにシャワーあびてよね」
「はぃはぃ」
「もう・・」
まだ少し文句をいいたそうに、直美が風呂場にまっすぐに向かっていた。
こっちは、それを確認して、ズボンも脱いで、ほんとうのパンツ1枚になってクーラーの風を浴びていた。独り言で、「暑うぅー」って、言いながらだった。

シャワーを浴びて部屋に戻ると、直美が少しの間だったのに直美は疲れてソファーに横になって眠そうな顔をしていた。
「眠くなっちゃったの?」
バスタオルで頭の髪の毛を拭きながら、ソファーから少し体を動かした直美に聞いていた。
「うん。さすがに疲れちゃった・・」
「じゃぁー 今夜は早く寝ようか・・・」
「早くっていっても、まだ、9時にもなってないけど」
直美が壁の時計を確かめながらだった。
「そうだけど、たまにはいいかもよ・・布団に引いて横になっちゃおうか・・こっちに布団引いたほうがいいだろ、広くて・・」
「うん」
「じゃぁー ソファー動かすから1回どいて」
直美に言うと、すくっと起き上がって、眠そうな顔だった。
「うん、お布団持ってくるのわたしも手伝うね」
直美がソファーを部屋の横に動かしていた俺にだった。
「いいよ。俺やるから」
さっきまで、元気だった直美が少し疲れているように見えて断っていた。
いつも元気な直美でも、そりゃー、炎天下で何時間もしゃがんでいたから仕方ない事だった。
「ありがと・・・」
直美がTVの方に体を動かして、座り込みながらだった。
「いいえぇー」
ふざけて答えていたけど、ありがとうって言葉が素直にうれしかった。

布団を2枚リビングに引いて、すぐに直美も俺も横になっていた。
電気を消して、まっくらにだった。
「明日は直美はバイト休みだよね・・」
「うん。劉は働くんでしょ」
「うん、でも、来週は夏休だから・・・」
急だったけど、3日だけ連休をもらっていた。
「わたしも2日だけ、なんとか休みもらったから・・」
「そっか・・急だったけど店長になんか、言われなかった?」
「うん、平気。どこか旅行でもいく?」
だんだんと目が慣れてきてこっちに顔を向けている直美の顔がはっきりだった。
「そうだなぁー どこか行こうか?」
「うん。でも、お金平気?」
「1泊なら、なんとか・・夏休みバイトいっぱいしたし、何も買ってないし・・」
「じゃぁー 伊豆行こう。骨折直って一緒にいったとこ・・」
交通事故で入院して退院したあとのバレンタインに二人で行ったペンションの事だった。
「うん、そうしようか・・明日連絡してみるね、泊まれるかどうか・・もう夏休み終わるから平気かなぁー 」
「大丈夫でしょ、うん、いいねぇー そうしよう」
言いながら直美の体がこっちにだった。
「うん」
「暑くない?」
「暑いけど、暑くない」
「大好きよ」
「うん」
直美の瞳がちいさく、綺麗に光っていた。

窓の外からは遠くで雷鳴が聞こえてきていた。

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生