夏風吹いて秋風の晴れ
「弓子ちゃんね、里美です、よろしくね」
「はぃ、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
娘さんもきちんと弓子ちゃんに挨拶を返してくれいていた。
「ほな、そういうこっちゃさかい、よろしく頼むわ。これから、町内全部を順番にまわるさかい、ここで失礼するわ」
「はぃ、ステファンさん、今度ゆっくりいらしてくださいね」
「そうかぁー 夕飯がええなぁー」
こんな時にも、きっちり大声で好き勝手な事を言っていた。
「ほな、失礼しまっせ」
神父さんが言うと、それに続いて、叔母と叔父が頭を下げながら、
「おじゃましました、よろしくお願いします」
ってきちんとだった。隣で弓子ちゃんも、もちろん頭をさげてきちんとだった。
「いいえぇー 今度ゆっくり遊びにいらっしゃいね」
って奥さんがそれに答えていた。
少し離れて、直美とそのやりとりをずーっと見ていたけど、関西弁のおっちゃんは、やっぱり、ただの変なおっちゃんではないんだなぁーって思っていた。
「うん、いいことだぁー」
直美の言ったことは、そのまま、俺もだった。
「さっ、わたしたちは、もう関係ないから、草取りしよう」
「うん」
関係ないってのは冷たい言い方ではなく、今日は、きっといいことだった。
「よかった、よかった・・うん、よかった」
笑顔の直美に、腕をとられていた。
作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生