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夏風吹いて秋風の晴れ

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照れながら


結局、昼食は大場とコンビに弁当にしようかって言ってたけれど、持ち帰り弁当屋の焼肉弁当の大盛りを食べて、二人でけっこう満足って感じだった。
それから、こいつは、いつまでいるんだろうなぁー って考えていたけど、夕方になる前に「ほいじゃぁー 明日ね」って言って帰っていた。
時間もきめてなかったけど、きっと、なんとなくタイミングよく大場は叔母の家に現れそうな予感だった。そんな奴だった。
それからは、けっこう暇な時間だったけど、2件も契約の見通しがたっていたから、それはそれで、いいことだった。
夕方になると、バイトが終った直美から、
「今日って遅いんだっけ?なに食べたい?」
って電話があって、
「辛めのカレー」
って注文をだしていた。きっと、真っ直ぐここからバイトを終えて帰った頃には、おいしいカレーが出来てるはずだった。
7時の閉店時間が待ち遠しかった。

まっすぐに豪徳寺の駅について商店街を抜けて、マンションが見えるところまで来て、5階の自分の部屋を見上げると、真っ暗で、「あれっ」って思いながら直美の部屋の3階を見ると、明かりがカーテンから漏れていた。
どうやら今夜は直美の部屋で晩御飯のようだった。
ちょっと早足で、マンションのエントランスを抜けて、エレベーターで3階にたどり着いて、直美の部屋のインターフォンに手をかけようとすると、いきなりドアが開いて
「おかえりー 見えたもん、窓から」
って直美の笑顔とおいしそうなカレーの匂いだった。
うれしかったのとビックリって顔の俺のはずだった。
「あぶねー ぶつかるかと思った・・」
「平気でしょ?お腹すいた?さぁ どうぞ」
言われて部屋にだった。
直美が俺の5階の部屋にいることは多かったけど、この部屋に俺が来る事って、なんか久々だった。
「すぐに用意できるけど、どうするー」
「着替えたいんだけど、俺のってなんかあったっけ?」
「あるよ、ほら・・」
Tシャツと短パンが用意されていた。
「これって こっちにあったのか・・」
Tシャツを手に聞いていた。どこやったんだろうって、探してたボーダーのTシャツだった。
「こっちにあるって前に言ったのに・・」
「へっ、そう、知らなかった・・」
言いながら着替えると、きちんと直美が背広とパンツをハンガーにかけていた。小声で、「まったく・・」って言いながらだった。脱いだ背広を椅子の上に放り投げたからだった。
着替が終って、小さな二人用のダイニングテーブルに座ると、すぐに麦茶がでて、
「いま、よそうからね。わたしも お腹空いちゃった」
って直美に言われていた。
「あっ、大場がさぁー 会社に朝からずーっといてさぁー 3時過ぎに帰ったんだけど・・」
「へぇー 久しぶりかなー」
「沖縄に行ってたらしい・・けっこう長かったのかなぁー 行くって言ってたんだけど、いく時には連絡なかったんだよね」
「ふーん、夏樹元気だったのかなぁー」
「そうみたいだよ、直美によろしくって言ってくれって・・」
「3週間前ぐらいに電話で話したのが最後だと思うんだよね・・元気ならいいや」
野菜サラダをテーブルに置きながらだった。大盛りって感じだった。
「沖縄かぁー 1回いきたいね、直美も行きたい?」
「うん、いいねー どれくらいかかるんだろうね飛行機代って?」
カレーを台所でよそっているようだった。一段といい香りが漂いだしていた。
「9月って台風とか来ちゃうんだろうなぁー 秋ぐらいに行ってみる?値段調べておくから・・」
「そうだねー 考えようか」
「うん。貯金少しあるから、夏樹の家にでも泊めてもらえれば平気かもよ」
「1泊ぐらいは、きちんとホテル泊まろうね」
カレーのお皿を目の前に出されていた。おいしそうなサラダと、夏に、俺が大好きな瓜のお新香も一緒にだった。俺も直美もカレーで味噌汁をきちんと飲みたいタイプだったから、もちろんそれも並んでいた。
「1泊ぐらいは 贅沢してもいいでしょ」
同じ考えだった。
「では、劉、いただきますか?」
「はぃ、いただきまーす」
「いただきまーす」
俺と直美の声が部屋に響いていた。
予想通りにきちんと辛口にカレーは出来上がっていた。こういうときに、味の趣味っていうか嗜好が合うってほんとにうれしい事だった。
「おいしい?」
「はぃ」
へんじもそこそこに カレーをいっぱい口に放り込んでいた。
冷房の効いた部屋でも、すぐにおでこに汗がうっすらだった。もちろん直美のおでこにもだった。
たわいもない日常だったけど、久々に落ち着いた2人だけの夜って感じで、俺はけっこう、うれしかった。
おかしな事だったけど、自分の部屋で過ごすより、ここで2人っきりだと、新鮮で、恥ずかしくって、おまけに、直美を好きだぁーって感じだった。

作品名:夏風吹いて秋風の晴れ 作家名:森脇劉生