【第十回】飛ぶ計画
「宝珠持ちに触ると願いが叶うんだぜ!!」
「声を聞くと病気が治るとか」
「髪の毛を財布に入れておくと水虫が治るんだってさ!!」
出所のわからないウワサを信じているのか人々が走る緊那羅を追いかける
「ちょ…退いてほしいっちゃ!! 通して!!;」
前からもやってきた人ごみに身動きを封じられた緊那羅が言う
「私は…ッ!; 痛ッ!!; 引っ張るなっちゃッ!!;」
まるでバーゲンセールの目玉商品のように人々の手が緊那羅に伸びた
「通してくれっちゃッ!!;」
緊那羅が叫ぶ
「おお! 宝珠だ!!」
「触るといいことあるんだろ!?」
一人が緊那羅の右腕を掴んだ
「やっ…; ちょ…離すっちゃッ!!;」
緊那羅が腕を振って捕まれているのを解こうとする
「私は京助を…ッ!!;」
身動きが取れなくなった緊那羅がそれでも何とか動こうと体を動かす
「ありがたやありがたや」
とうとう拝み始める人も出て緊那羅の周りが厚い人垣で囲まれた
「ッ…京助---------ッ!!」
緊那羅が京助を呼んだ
「キョウスケって何だ?」
聞き慣れない言語に人々が疑問じみた会話を始める
「竜様の穴埋めに入った方の名前か?」
「いやソレにしては変な名前…」
ザワザワと話していた声が一瞬で静まり緊那羅を掴んでいた手からも力が抜けた
「…何…」
力の緩まった人々の手を離し顔を上げた緊那羅が人々が同じ方向を見てぽかんとしていることに気付いき緊那羅もその方向を見た