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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十回】飛ぶ計画

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「…いるんだろ」
自分が言ったのかもわからない自分はこんな声だったろうか
「ッ…」
唇をかみ締めて京助が顔を上げた
薄い青…青銀が目の前にあった
細い指がすっと上がり指し示したのは京助のジャケットの右ポケット
「…何…」
指されたポケットを見てその後再び顔を上げるとそこはまた真っ白な空間
今さっきまで人がいた形跡はどこにもない真っ白な空間
それでも歌声はまだ聞こえ続けていた

変わらない大きさで

変わらない優しさで

「…財布…」
とりあえず右ポケットに手を突っ込んだ京助が取り出したのは黒い自分の財布
後は何もポケットには入っていない
「…なんだってんだ…?」
京助が財布をひっくり返しもっ繰り返しして見た後何気にそっと財布を耳に当てた
「…まさか…」
耳から財布を放すと京助が財布のファスナーを開けた
はらりとレシートが落ちたが拾う気はなく
「…これ…か…?」
落ちたレシートともに取り出した物を京助は耳に当てた

『これが京助のだっちゃ』

そんな言葉とともに緊那羅から手渡された【最後に咲いた桜の花の花びら】が一枚入っているプラ板で作られたお守りのような物
間違いなく歌声はコレをくれた緊那羅のもので
そしてその歌声は間違いなくソレから聞こえていた
「…そいや…こんなのももらったっけな」
入れっぱなしで忘れていたそのお守り (?)を見て京助が口の端をあげた
財布をポケットにしまいお守りを手に握って顔を上げると見えたのは再び青銀の髪

『願って』

小さく一言青銀の髪が言った

「願うって…」

『貴方はまだ負けていない…私の様になっては駄目』

細い指がお守りを握る京助の手に添えられた

『会いたい人…聞こえるでしょう?向こうも同じ…』

京助の手を包む細い指に少し力がこもった

『名前を…今なら大丈夫』

細い指が離れて京助の手が暖かくなる
「コレ…」
京助が手を開くとお守りの中の花びらが鮮やかに光っていた

『戻って…』

真っ白な空間にその声だけが歌声に混じって響いて消えた


作品名:【第十回】飛ぶ計画 作家名:島原あゆむ