【第十回】飛ぶ計画
真っ白な真っ白な空間
天井と床と壁の境目なんか見当たらない真っ白な空間
自分が今ここにいることも疑いたくなるような真っ白な空間
足元を見ても影は無く見えたのは自分の足だけ
声が出るのかもわからないから出さないのかそれとも出せないのか自分にもよくわからない
自分が【栄野京助】であることもわからなくなりそうな
あまりにも真っ白な空間
止まってたら本当に自分が自分…栄野京助であることもこの景色のように頭の中が真っ白になってわからなくなりそうで京助は足
を一歩踏み出した
当ても無くどこなのかもわからずでもただ足を進める
歌が聞こえた
聞いたことのある声が優しく歌い真っ白な空間と京助の頭に響く
決して大きな声ではなく逆に小さくもなく心地よい大きさの歌声
真っ白な空間に京助がその歌声の主の姿を探す
歩いていた京助の足が小走りから駆け足になりそして走り出した
あまりにも真っ白な空間に眩暈まで覚えた
それでも聞こえる歌声に京助は走る
変わらないままの真っ白な空間
変わらないままの大きさで聞こえ続ける歌声
さすがの京助も息が上がって足を止め膝に手をついた
一体どれだけ走ったのだろう
全校マラソン大会で5キロは軽く走れた
登山も走って登り走って下山してそれでもまだ素手で魚を取る元気があった
そんな京助が息を切らせるまで走り続けても真っ白な空間と歌声は全く変わらなかった