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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十回】飛ぶ計画

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「乾闥婆?」
足を止めて上を見た乾闥婆に坂田が声をかけた
「どうしたんだやな? 京助いたんだやな?」
ゴが乾闥婆に駆け寄った
「いえ…そうではなく…なんだか胸騒ぎが…」
自分の胸元を掴んだ乾闥婆が宮の方を見る
「まさか京助…」
「シャラ-----------------------------ッ(プ)」

スパ----------------------------ン!!!!

言いかけた中島の口を坂田が勢いよく平手でふさぐ
「気のせいだ気のせい! うん!! そうだ! そう思って! お願いだから!!;」
乾闥婆の肩を叩きながら南が言う
「そう…だと…僕も思うようにします」
肩を叩いていた南の手を掴んだ乾闥婆が言った



マホの右目が完全な桃色になる
「なんだ…?」
集団がざわめきだした
「俺ってね」
マホがにこっと笑った
「特別って言葉嫌いなんだ~」
そして集団を見る
「宮のヤツ等だって宝珠が無きゃお前達と一緒だし…別に特別じゃないでしょ」
腕をつかまれたままさっきまではかろうじて意識はあったと思われる京助を見てマホが言う
「だからなんだって言うんだ?」
頭っぽい男がマホを睨んだ
「…俺に力を使わせないでよ」
にっこり笑っていた目が鋭く集団を睨むと集団が一斉に息を呑んだ
「俺は特別はいらないし特別にはなりたくない」
マホの左手がスゥッと集団に向いた
「だから俺に力を使わせるな」
まるで蛇に睨まれたカエルのように黙ったままの集団にマホが言う
「ッ…; オィ!!」
頭っぽい男が何とか声を出すとハッとした集団が一斉に走り出した
腕をつかまれたまま気を失っているっぽい京助を数人で運ぼうとしている男達にマホが視線を移した



「もしかして…もうアソコに先にいたりしないもんかね」
坂田が言うと先頭を歩いていた乾闥婆が足を止めた
「いくら京助でも無理無理; だいいち道がわかんないじゃん」
南が言う
「…ココの道は全て宮に通じます」
乾闥婆が言った
「どの道も必ず宮へ通じます…どんなに時間がかかっても必ず宮へ」
乾闥婆の言葉に3馬鹿とゴが顔を見合わせた後ニーっと笑った
「それを早く言ってほしかったんだやな!!」
ゴが言う
「そうそう!じゃ最初からアソコめざしゃよかったんじゃん!!」
中島が嬉しそうに宮を見た
「…必ず宮には通じますけど距離を考えてください…道はそれぞれ長さがあります…どの道も決して同じではないんです」
乾闥婆が言う
「もし僕等が一番早い最短の道を来て京助が一番遠い道を歩くならば決して出会うことは無いんです」
3馬鹿とゴを流れるように見ながら乾闥婆が言った
「それって…」
少し間を置いて坂田が乾闥婆に聞く
「宮への道は…詳しい人でも詳しく知らない…わかっていてもわからない…それが宮への道なんです」
乾闥婆が言う
「じゃあ乾闥婆は何でこの道を選んだんだ?」
中島が自分達の立っている道を足で数回踏んで言う
「宝珠の導きです」
乾闥婆が言った
「また宝珠…」
南が呟いた
「僕等は宝珠に導かれるまま…」
乾闥婆が俯き呟く
「全部宝珠かよ…;」
坂田が言う
「…宝珠がなければ…何もなかったんですよ…そう…何もなかったんです」
乾闥婆がどこか悔しそうに言った
「全てが…僕の罪も迦楼羅の罪も【時】も…宝珠なんかがあるから…」
自分の胸を掴んだ乾闥婆が唇をかみ締めた
「お…落ち着いてけんちゃん;」
そんな乾闥婆の腕を掴んで南が軽く肩を叩いた
「今は京助京助;」
南の言葉に深く深呼吸をした乾闥婆が顔を上げた
「…そうでしたね…すいません」
自分の胸から手を離した乾闥婆が南を見た
「何?」
南がきょとんとして乾闥婆を見返す
「いえ…ありがとうございました」
お礼を言った乾闥婆が肩から南の手を外し宮を見る
「とりあえず行ってみようぜ? それっきゃねぇべ」
坂田が歩き出す
「だな」
顔を見合わせて同時に頷いた中島とゴも歩き出した
「…いこっか」
南が乾闥婆に声をかけると乾闥婆が軽く頷き歩き出す
「…なぁ乾闥婆」
追いついてきた乾闥婆に中島が声をかけた
「なんです?」
「や…のな? …アイツもアソコにいるのか?」
「アイツ? 緊那羅ですか?」
ボソボソと言う中島に乾闥婆が聞き返す
「緊那羅じゃなく…その…ヨシコ」
「吉祥?」
かろうじて聞き取れる大きさで言った中島の言葉を乾闥婆が繰り返した
「だッ; …まぁ…うん;」
中島が気まずそうな顔をそらした
「…いますよ」
乾闥婆が答える
「そっか…」
中島が嬉しそうに宮を見た

作品名:【第十回】飛ぶ計画 作家名:島原あゆむ