【第十回】飛ぶ計画
「…緊那羅!!」
足を止めた緊那羅を振り返り阿修羅が緊那羅を呼んだ
「止まるな!; 宮司がきてんだぞ!!;」
阿修羅の声に躊躇いながらも緊那羅が走り出した
「どうしたのだ;」
何故か一緒に走っている迦楼羅が緊那羅に聞く
「ううん…なんだか…なんでもないっちゃ」
ボソボソッと言うと緊那羅が顔を上げた
「にしても本当このままじゃ…;」
阿修羅が後ろをチラッと見てそしてすぐさま前を見た
「だから外に逃げようって言ってるじゃない」
阿修羅の小脇で黙っていた鳥倶婆迦の言葉に三人が鳥倶婆迦を見た
「外…!!」
そして迦楼羅が足を止め並ぶ窓に手を…伸ばしたが届かない
「窓から出てもここは…ッ;」
迦楼羅が開けようとしていた窓を緊那羅が開けると一気に風が入り込んで緊那羅と迦楼羅髪が靡いた
「ヒョー; 高っかい高っかい;」
阿修羅が窓の下を見て言う
「いくぞ」
迦楼羅が窓枠に手をかけてよじのぼろうと試みるのを緊那羅が脇の下に手を入れて手伝う
「いくぞって…かるらん…」
ミョンミョンした飾りを風に遊ばれながら阿修羅が窓枠に立った迦楼羅を見上げた
「迦楼羅…」
「少ししゃがんでいろ」
迦楼羅が言うと風が少し強くなったのを感じた阿修羅と緊那羅がしゃがむ
「お面押えておけよ? ばか」
「鳥倶婆迦だ…ッおわ!!;」
阿修羅が笑いながら言った言葉に突っ込んでいた鳥倶婆迦が慌ててお面と帽子を押えた
「いきなりは駄目でしょ」
パシンという音をさせてマホが男の拳を止めた
「な…ッ;」
拳を止められた男はもちろん回りの集団も驚いてマホを見る
「戦いはまず礼から」
黒い髪結い紐の先の桃色の飾りが宙を舞いマホが集団から離れ立ち上がった
「礼だぁ?」
立ち上がったマホがまるで英国紳士のように胸に手を当てそして深々と礼をした
「いったでしょ? ソイツ俺のお気に入りだって」
顔を上げたマホの目が開く
「面白いし変わってるし…」
開けたマホの目が鮮やかな緑色から桃色に変わっていく
「案の定退屈をしのげるみたいだしね」
京助はマホの口元が笑ったのをうっすら見たような気がした