小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
上田トモヨシ
上田トモヨシ
novelistID. 18525
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

短文(食)

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

「なあ、まだあ?」

そう言って箸で皿を叩く音が聞こえる。
行儀が悪いから止めろと、何度言っても聞かない。あれは兄貴の悪い癖だ。

「大人しくしてねぇと昼メシ抜きだコラァ」

俺が口汚く返すのも毎度のことだ。
薄切りにした玉ねぎと一口大に切った鳥もも肉を炒めながら、隣のガスにかけた手持ち鍋の具合を確認する。
ふつふつと煮立つホワイトソースに、塩とホワイトペッパーを振り入れて、フライパンにはシメジを放り込んだ。
フライパンの方は白ワインを加えたあと、塩コショウで味を調える。
唐突に、昼メシにグラタンが食いたいとのたまった兄貴は、なぜか箸を両手にチンチキ皿を鳴らしながら待機している。
「日本人なら箸を使え」とはじいちゃんの口癖だったが、あの兄貴がそんな遺言じみた台詞を覚えているとは思えない。
それにうちのじいちゃんは御年八十七歳で、いまだにゲートボールや老人会でばあちゃん方の尻を追っかけ回している色ボケジジイであり、あと十年やそこらは葬式の準備は必要ない。
そんなことを考えながら、具材に八割方火が通ったところでほうれん草を投入。
全部の具材が混ざったら、最後にホワイトソースと絡めて、二つのグラタン皿へ分け入れる。
あとはお好み量のチーズとパン粉をかけて、オーブンでこんがり小麦肌になって帰ってくるのを待つばかりだ。
そこでふと思い出す。
そう言えば、今日もゲートボールへ行ってくると朝の七時に家を出たじいちゃんは、カレーやシチューまで箸で食す強者だった。









作品名:短文(食) 作家名:上田トモヨシ