カナカナリンリンリン 第一部
私は、この滝も自分のイメージに合った滝ではないなと思いながら眺めていたら、目の前に男が立って、
「ここで会ったのもご縁ですから」
、などとほほえみながら言う、私は何を言い出すのかと思ったら
「写真を撮っていただけないでしょうか」と言って、カメラを差し出した。
「シャッターを押すだけですから」
男は私にカメラをあずけると、皆に声をかけて滝の前に整列させた。私はフレームからはずれた男を中に寄せてシャッターを切った。
「ありがとうございました」と言って男はカメラを受け取り写真を確認した。
「心霊写真になっていない?」と私が冗談を言うと、
「ははは、それもいい記念になるなあ、残念ながら」と言いながら液晶の画面を見せてくれた。デジタルになって、すぐに確認できて便利になったものだと思った。
それにしてもなぜ、と私は自分が心霊写真などということを言ってしまったことに、ちょとだけ心にひっかかった。そんなものは全然信じていなかったのにだ。
「いつも一人ですか」と男が聞くので、さすがにリュックに妻がと言えないので、「ああ、大体そうですね」と言ったら、少し同情したような顔をしてから仲間のほうに歩いて行った。「少し早いけど、ここでお昼にしようか」とグループが相談している声を背中で聞きながら、私はさらに上にある筈の絹の滝目指して細い坂道を登り始めた。
作品名:カナカナリンリンリン 第一部 作家名:伊達梁川