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カナカナリンリンリン 第一部

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道を尋ねたときに男が指を指した一つ目の滝にはすぐに着いた。注意しないと通り過ぎてしまうほど、緑の樹々で両側で覆われた薄暗い中を水はひっそりと流れていた。これはさすがにわざわざ見にはこないだろうと思った。小さな橋の上で小さな滝をみる一人の男、絵にならないなあと苦笑いしながら、水分を補給して気を取り直し私は歩き出した。依然として歩いているものはいない。たまに車が通り過ぎるだけだった。

やっと目指したバス停にたどり着いた。教えてもらったように滝のある場所の案内標識が示す方に歩き出す。舗装された坂道は木陰が無かった。たまにある民家の庭木の木陰でひと息いれながら緑豊かな庭を見る。民家はまるで無人のように音がしない。ここだけでなく、この時間に外にいるのは物好きだけだと言わんばかりに、人に会わなかった。

予想外に滝は遠くにあるらしい。いや坂道のため速度が遅いのだろうか、舗装された坂道が続く。私は修行僧のような気分で黙々と歩いた。もちろんリュックの中の妻に話しかけることもない。ふと、妻は迷惑しているだろうかと思った。もちろんイヤだようとも嬉しいという返事も帰ってこない。霊とかを信じているわけでもないし、酔狂というものなのだろうなあと私は醒めた感じで黙々と歩いた。こんな坂の続く山の中腹まで民家があるのだなあと感心しながら、そして今現在のように自家用車が一家に何台もある時代ではなく、昔は歩いたのだなということにも感心してしまう。