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カナカナリンリンリン 第一部

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滝壺に近づくにつれ、仰角が増し、天から降り注いでいるように見える。滝壺は水量の割には大きく、深い藍色で深さもあるようだった。それは滝と呼応するかのように静かな音と、水面に規則正しい波紋を作っている。遠くでリンリンリンという音が余韻をもち次第に小さくなって聞こえる。どこかで聞いたような音だが、それは森の中で聞いた音に似ているが、少し違うような気もした。少し疲れた足を冷やそうと靴を脱ぎ、ズボンの裾をまくり滝壺の浅瀬に入った。思いの外冷たかったが、すぐに慣れて、さらに仰角を増した滝を見上げた。

天を仰ぐように見ている白い滝の水が光り輝いて見えた。私は畏怖の念のおそわれながら前に進んだ。最初に冷たいと感じた足も、次第に心地よく感じて、さらにゆっくりと進んだ。目をそらしてしまうのがもったいないような気がして、滝を見上げたままだが、足は前に進んでいる。滝を中心に風景全体がキラキラと輝いて見える。自分の身体をどうしようと安全であるような気分だった。身を投げ出して恍惚とした気分になりたいというように前に進んだ。それは進んでいるというよりも引き寄せられているという状態だったが、気分はもう何があっても受け入れる、なすがままになるという状態だった。

コトッと、そしてカランと音がして私は、音のするほうに顔を向けた。位牌がベンチから下に落ちて、小石の間で斜めになっているのが見えた。そして私は知らぬ間に滝壺の真ん中近くまで来ているのを知ってうろたえた。水は胸の辺まである。とたんに恐怖に襲われた。心臓が緊急状態だというように速く動いているのが感じられた。呼吸がうまく出来ないような窒息感を、無理に鼻から大量の息を吐き出した。それから大きく息を吸った。