儚い夢
式が終わり、立食パーティーになった。
あの男性、というか師匠は誰かを捜しているようだった。
きっと私を捜しているのだろう。
佳作は名前しか呼ばれないから、顔はわからない。
メッセージでも写真を交換していない。
師匠を見つけられるのは私だけ。
本心を言えば、向こうから見つけ出して欲しい。
でも、趣味人の私と弟子であった私が同一人物であるとわかるはずがない。
だから、私が声をかけるしかないのだ。
涙をぬぐい、人混みを抜けて彼のそばに立った。
そして、後ろから趣味人倶楽部での彼の名前を呼んだ。
振り返って、私の名を呼んで微笑んだ。
「やあ、潤子さん?潤子さんだよね?……いや、違う。君は……もしかして?」
「はい、そうです。お久しぶりです、師匠。」
その言葉で思い出したようだった。
「でも潤子で間違いないんですよ。趣味人倶楽部ではその名前ですから。3位入賞おめでとうございます。さすが我が師匠ですね。」
どうにか、にこやかな顔を作ってお祝いを言った。
でも実は声は震えていた。
無理して作っていた笑顔が崩れ始めた。
必死に我慢していたのに、涙が心を裏切ってまた流れ始めた。
彼が急いで会場の隅に置いてある椅子へ私を連れて行った。