儚い夢
椅子に並んで腰掛けたと同時に私の口から言葉が溢れ出た。
「あの日突然1通のメールだけで師匠がいなくなってしまって、どうしていいかわからなかった。立ち直るのに何年もかかったの。
あの日から全然書けなくなって、最近やっとどうにか書きたい気持ちになってきたの」
それを聞いて、彼も「僕もそうだったんだよ。あのメールを書いた時すごくつらかった。
どうしても別れるしかなかったから。でも言ってたよね。いつか同じ公募に出して授賞式で会えたらいいねって」
「うん、私もその言葉だけを励みに公募に出していた。同じ公募かどうかわからないけど、書いているうちにきっとどこかで会えると思っていたから。
でも趣味人倶楽部にいると思わなかった」
「だって、君が教えてくれたじゃないか。このSNSにも入っているからって」
そう言えば、別れる直前にここに入っていることを教えたような気がした。
「だから入会して、君らしいHNや作品を探していたんだ。小説は作風が変わっていないからすぐわかったよ」
ただただ、涙を流して話を聞き頷くだけだった。
書いていればいつか、必ず会えると信じていた。
それが叶った、今の幸せを噛みしめていた。
やっとこの腕に抱きしめられる。
そう思って涙顔のまま腕を彼の方に伸ばした。
「師匠!」