蒼刃
同時に斎藤は飛び下がり、刃を向けて武田の最期を待つ。
武田は、二歩よろめいて倒れ、暫く痙攣し、そのまま動かなくなった。
彼が倒れた場は、銭取橋には一歩足らぬ所であり、斎藤は少し哀れに思ったのか、一言掛ける。
「武田さん、今までの働き、ご苦労さま」
そして、刀を懐紙でぬぐいながら斎藤は、篠原に向いて自らの袖を見せた。
「新のを出したのに、汚してしまった。こういう所は総司に及ばんな」
近づいてまじまじと見ると、羽織りの袖に、小さな赤い斑点が幾つか付いている。
篠原は軽く唇を噛みながら斎藤を見、何事か言葉を探すが出てこない。仕方なく、質問で返す。