蒼刃
「いや、いいさ」
呑気そうに言って、鯉口を切り、備前伝は無銘の古刀、深反り二尺六寸を抜いた。
余りにも自然に、音も無く抜いた為か、武田も、篠原でさえも虚を突かれて後じさる。
「貴様!?」
「ご託宣は結構。始めましょうや」
穏やかに言った斎藤に遅れ、武田は山城伝らしき、品の良い古刀二尺三寸五分を引き抜く。
しかし慌てて抜いた為か、豪華な朱鞘が軋んで悲鳴を上げた。
沖田ならばこの鞘音だけで、相手に興味を無くすかな?と、斎藤は心内で思い、笑った。
「何を笑っているのだ、斎藤!?」
問いには答えず、斎藤は切っ先を向ける。