淡墨桜よ、朱となり舞い上がれ!
そんな学生時代の終わりに、若者の間では『フランシーヌの場合』という歌が流行っていた。
フランシーヌの場合は あまりにもおばかさん
フランシーヌの場合は あまりにもさびしい
三月三〇日の日曜日
パリの朝に燃えた命ひとつ
フランシーヌ
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フランシーヌ・ルコント (三〇歳) が、一九六九年三月三〇日、政治的抗議のためパリで焼身自殺をした。
それを題材にした反戦歌だ。
しかし大輔の魂を燃やすものは、学生運動から紗智子へと変わってしまっていた。そのせいか、卒業する頃には、この歌がなんとなく古臭いものに感じられていた。
しかし紗智子は違っていた。この歌をよく口ずさんでいた。
そんなある日、大輔が紗智子を思い切り抱いたことがあった。
その後に、紗智子が耳元で、なぜか大輔をからかうように替え歌にしてこの歌を唄ったのだ。
ハナキダイスケの場合は あまりにもおばかさん
ハナキダイスケの場合は あまりにもさびしい
三月三〇日の日曜日
京都の朝に燃えた命ひとつ
ハナキダイスケ
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作品名:淡墨桜よ、朱となり舞い上がれ! 作家名:鮎風 遊