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淡墨桜よ、朱となり舞い上がれ!

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 大輔は、清純で清楚な紗智子に憧れを持った。そして不思議にも、なんとなく気が合い付き合い出したのだ。

 初めてのキスの時、紗智子は花の妖精のようにふうっと目を閉じた。
 その速さは遅くもなく、また速くもなかった。まさにふうっとだ。
 大輔は、その神懸かり的なまぶたの動きに、この世のものとは思えないような感動を覚えた。そして、そっと唇を合わせた時に、大輔はひやりとした冷たさを感じた。 
 その冷感な温度が大輔の捩(よじ)れた心をはっと目覚めさせてくれた。その上に、淡い甘さがそこにはあった。

 紗智子の唇。それは端麗ではあるが艶(つや)っぽい、そして、エレガントだけれどもセクシー。
大輔は、そんなもの自体が、この世の中に存在することが信じられなかった。

 殺伐とした学生時代を過ごしてきた大輔。
しかし幸運にも、最後に見付けたのだ。女神を。
 いや、それは少し違うのかも知れない。無理矢理にそれを表現すれば、紗智子は魔性の妖精だったのだろう。

 大輔は魔法にかかったように紗智子の虜となった。
 しかし、それは心を吸い取られてしまったということではなく、大輔の魂をもう一度蘇生させてくれたのだ。