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淡墨桜よ、朱となり舞い上がれ!

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 大輔は、別れた妻がどこにいるのか、辺りに目を走らせる。
 そんな時に、瑠奈はたどたどしく話してくる。

「ねえグランパ、この桜って、墨の色になって散るんでしょ。だけど、幸せな人は赤く見えるんだって・・・・・・。私も赤くお空へ散って行くのを見てみたいなあ」
 大輔は、唐突に瑠奈が言い出したことに驚いた。

「瑠奈、そんなこと、誰に聞いたの?」と問い返した。
 すると瑠奈は、何のわだかまりもなく、まるで大輔に内緒話しをするように話す。
「グランマよ、これ秘密ね。グランマは、いっつも赤く見えるんだって・・・・・・。四〇年もだし、それに今年もだって。そう言ってたよ」

 大輔は、瑠奈が明かす言葉にもう何も返せない。瑠奈が愛おしい。思わずぎゅっと抱き締めた。
「きゃっ、グランパ、痛いよ!」
「グランパは、瑠奈が世界で一番好きだよ。瑠奈もきっと赤く見えるよ」
 大輔は瑠奈にそう囁いた。

 そんな様子を桜の木の奥の方から紗智子が見ている。そして小さく手を振ってきた。
 大輔は、「ちょっと、グランマの所へ行ってくるからね」と瑠奈に告げ、紗智子のもとへと歩いて行った。