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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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かみさんとかみそり

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この所行き付けの床屋に3カ月ほど行っていなかった。それと言うのもその床屋には駐車場が無いのだ。近くにスーパーがあるので、そこに車を置けばいいのだが、何となく気が引けるので、いつも自転車で行っていた。その自転車もパンクしたままであった。自転車屋に持って行くのも大変なのでいつも自分で直していたが、あいにくパンクの糊が終わっていた。
そんなことで1000円の床屋に行っていた。だが、接客が悪いので再び行く気にはなれなかった。
今日は雨なので車をスーパーに止めた。
床屋のガラス戸を開けると、ラジオの声とともに、パウダーの臭いがした。
「いらっしゃいませ」
女の声であった。ここには旦那1人だと思っていたので少し驚いた。
顔を見るとまだ40歳くらいに見えた。ここの旦那が60歳は超えているようだから、おかみさんにしては若いと思った。
調度客は誰もいなかった。
「こちらにどうぞ」
首に紙テープを巻いた。
「きつくありませんか」
「大丈夫」
鏡から女性の顔が見えた。
ショートカットの頭で色白であった。目が大きく、鼻は少し開いていた。
何とも言えない気やすさを感じた。
作品名:かみさんとかみそり 作家名:吉葉ひろし