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てっしゅう
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「新・シルバーからの恋」 第七章 再婚

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「歩いて帰れるの!駅の反対側のマンションだから・・・送って行って」
「そうなの?歩けるの?本当に」

店を出てふらつきながら美雪は歩いていたが、やがて副島にもたれかかるようになり引っ張られるように歩くことしか出来なくなっていた。何とかマンションまで辿り着きエレベーターで7階まで上がり玄関の扉を開けた。

「じゃあ、ここで帰ります。また連絡しますから逢って下さい」
「さっき言ったでしょ、一人はいやだって・・・酔った振りしていただけ、副島さん恥ずかしい思いさせないで・・・上がって下さい」
「美雪さん・・・今日逢ったばかりですよ」
「そんな事関係ないの・・・好きになったから一緒に居たいの、それだけ」

副島は中に入った。美雪は扉が締まると強く副島に抱きついた。男としての本能がゆっくりと目を覚まし始めた。
「美雪さん!好きです。あなたが・・・欲しい・・・」
「私も・・・」

そのまま直ぐにベッドに倒れこんだ。

「ねえ順次、あの二人どうしているかしらね?」
ベッドで愛し合った後悦子はそう聞いた。美雪の想像通り悦子は二人から刺激を受けて夫を誘っていた。この頃誘うのはもっぱら悦子の方だった。

「あのままカラオケに居るとは思えないから、どこか飲みにでも行ったかも知れないなあ」
「そうね、明日美雪に聞いてみよう。でも良かったわね気が合って。副島さん素敵な方ね。美雪もきっと幸せになれるわ。6月の結婚もあながち無理じゃないかもですね」
「そうだなあ・・・ハワイでの挙式か、二人だけのウェディングベルってそれも印象的だろうなあ」
「そうよ、素敵な思い出になるわよきっと・・・私たちも行けるといいね」
「美雪さんの結婚式だったら出席を理由に仕事休めるぞ。相手は副島だし」
「そうね、お許しが戴けそうだわ・・・早く決まってくれると準備がしやすいですわね」
「すっかり行く気分だなあ・・・海外は初めてじゃないのか?」
「ええ、そうですよ。あなたが連れて行ってくださらないから、この歳まで行ったことがないのよ」
「悪かったな、これからはいろんな所へ出かけよう。ハワイは手始めだな」

まさか副島が美雪のマンションに泊まっただなんて、この時は考えもつかなかった悦子と順次であった。次の日曜日に悦子は美雪に電話をした。
「おはよう、どうだった・・・いろんな話が出来たんじゃない、副島さんと」
「お姉さん・・・昨日はありがとう。うん、たくさん話しましたよ」
「どこへ行ったの?後から」
「ええ・・・駅前のバーに行きました」
「そう、あそこはムードもあるしいい場所よね。副島さんと具体的なことまで話したの?」
「お姉さん・・・副島さん、昨日泊まったの、ここに・・・今も奥に居るけど」
「えっ!そんな・・・」

悦子はその後が言えなかった。まさかそこまでという気持ちと、自分と同じ寂しい気持ちから抜け出したかった美雪の心情も解かるような気がしたからだ。

日曜日の朝、美雪は副島より早く目を覚ました。もたれかかっている左肩と左腕そして左頬から副島の温かさが伝わってきた。起こさないようにそっと身体を離し、ベッドから降りて風呂場に向かった。熱いシャワーを浴びながら髪を洗い、顔を洗い、眠っている身体を呼び覚ました。立っているとわずかに副島のものがこぼれ出してきた。

「そのまま眠ってしまったんだわ・・・イヤだわ。恥ずかしい・・・」

酔っていたとは言え化粧も落とさずにそのまま寝てしまうなんて・・・まして後始末もしないで。きっと副島が優しくしてくれたのだろうと思うとあわせる顔が無い。バスタオルを巻きつけ、髪をタオルで包み浴室を出た。洗面所で身体を拭き、髪を乾かしていると、副島の声がした。

「美雪さん!何処に居るの?」
隣で寝ていたであろう美雪が居ないことにちょっと驚いたのであろうか、びっくりしたような声に聞こえた。

「はい、副島さん、洗面所に居ます。ちょっと待っていてください。直ぐに行きますから」そう返事して、ドライヤーの風量を最大に変えた。スッピンを見られるのは恥ずかしかったが、こんなことの後だから自然にと思いそのままの格好でベッドに行った。

「ゴメンなさい。起こさないようにと思って先にシャワーを浴びてきました。化粧していませんからあまりじっと見ないでくださいね」
「そうなの?化粧無しでもぜんぜん大丈夫だよ美雪さんは・・・今のその格好も色っぽいし・・・なんだか夢を見ているみたいだ」
「あら、朝からそんなお世辞言って・・・悪い人ね。ずっとこれからそう言い続けないといけなくなってしまいますわよ」
「ああ、言うよ、美雪さんが喜んでくれるのならお安い御用だ」
「ねえ、美雪って呼んで・・・私も行則さんって呼ぶから」
「いいのかい?・・・美雪・・・」
「はい、行則さん」

行則の手は美雪の巻きつけているバスタオルに伸びた。

「ダメですよ!朝なんですから・・・それにこんなに明るいし。さあ起きて、シャワーを浴びてきて下さい。ご飯の用意しますから」
「そうだな・・・なあ、本当にボクでいいんだよな?だまされていないよな?」
「疑い深いのね、仕事柄かしら・・・行則さんとは一つになったのよ。そんなこと誰とでもするって思われているの?」
「そんな風には思ってないよ。怒らないで。言い方が悪かったけど、ボクみたいな男でいいのかと信じられないんだよ、今でも。目の前に居るキミは、あまりにも若く綺麗で優しい。こんな事って・・・」
「行則さん、そんな風に考えちゃダメよ。男の人はもっと自信を持って臨まなきゃ・・・女はね、その強さに魅かれるの。これからは思うとおりに引っ張っていって。美雪は着いて行きますから」
「うん、良かった、美雪とこうなって・・・男として自信が蘇って来たみたいだ。気力を無くしていたけど仕事にもこれから頑張れそうだ。本当にありがとう。シャワー浴びてくるよ」
「ええ、そうなさって・・・タオルは新しいのを使ってね」
「解ったよ」

台所で着替えを済ませた美雪はコーヒーをドリップマシンで淹れてオムレツと野菜サラダを作って行則が出てきたらパンを焼くだけにして待っていた。少しひげが伸びているのを見てくすっと笑った。
「どうしたの?何か着いているかい?」
「いいえ、おひげが伸びているから、長く一緒に居たんだって思ったの」
「そうか、髭剃りは持ってなかったなあ・・・」
「後で買ってきましょうか?」
「いいよ、帰るまでの事だから」
「そうね、じゃあ頂きましょう。バターでいい?ジャムがいい?」
「バターで・・・なんだか久しぶりだよ、こうして朝ご飯食べるなんて」
「私もよ・・・いつもぎりぎりまで寝ているから」
「同じだ!ハハハ・・・幸せだよ、美雪。愛しているから・・・」
「行則さん・・・一緒よ、もう離さないでね。ずっと一緒よ」

食べ終わってソファーでテレビを見始めた時に、電話が鳴った。
「はい、中山です・・・お姉さん?昨日はありがとう。うん、たくさん話しましたよ・・・」


副島は昼前には帰ると言って出て行った。守口駅まで見送りに行き美雪は改札口で手を振って別れた。
そしてその場から携帯で悦子に電話をした。