「新・シルバーからの恋」 第七章 再婚
第七章 再婚
雑談をしながら話は核心部分へと移ってきた。副島は美雪のことがすっかり気に入ってしまった。なんと言ってもその容姿の若さと色っぽさ、それに物腰の柔らかさ、全てに女を強く感じさせられたからだ。美雪は真面目で几帳面な男性だと、今までに交際経験した事がないタイプだったので興味を魅かれていた。一人一曲ずつ歌を披露してよりリラックスしたタイミングで、美雪は聞いた。
「副島さん、亡くなった奥様のこと伺っても宜しいですか?」
「・・・話さないといけませんでしたね。全て私が悪いと思っています。思い出すと辛いのですが、今は許す気持ちになっています。お聞きのことと思いますが、妻は浮気を3年間ほどしておりました。ガンに罹って治療をしないといけなくなってから、別れたようですがその時の気持ちはおそらく病気より辛かったことでしょう」
「副島さん、良くそこまでご理解なされていますね。感心です。もう後はお話なされなくて結構です。美雪は副島さんが必要と考えてくださるのでしたら、喜んでお付き合いさせていただきます。私は自分の身勝手から浮気をして主人と離婚しました。そしてその浮気相手からも酷い仕打ちを受けて・・・」
そこまで話すと、言葉が途切れてしまった。悦子は傍によって肩を抱き、
「もう、話さなくていいの!副島さんにそんなこと言わなくてもいいの!」
二人は互いに嗚咽を漏らし始めた。
どんな辛い事があったのかその様子で副島は想像できた。平川も聞かされていなかった美雪の浮気の部分を知った。
「美雪さん、私でよかったらその悲しみを少し分けてくださいませんか?一緒に泣きましょう。そしてそのあとは喜びを倍にして生きてゆきませんか」
「副島さん・・・ありがとうございます。美雪のこと一生守ってください。お願いします」
「はい、絶対に守ります。もう二度と悲しい思いをさせる事はしません」
悦子と順次は手をたたいて祝福した。こんなに早く二人がお互いを好きになるなんて、きっと我慢していた悲しみが解かり合えたのかも知れない、そう悦子は思った。
悦子は美雪の涙をそっと拭い副島の隣に座らせた。
「副島さん、私からも美雪のこと幸せにして頂けるようにお願いしてもいいですか?」
「俺からもだ!副島、今のお前の言葉はしっかりと耳に残しておくからな」
「はい、誓います。今夜は忘れることが出来ない日になりました。平川のお陰だなあ、本当にありがとう」
「俺じゃないよ、悦子がいてくれたから今があるんだ。礼は悦子に言ってくれ。それと、なんと言っても美雪さんの気持ちに感謝するんだなあ。お前なんかにはもったいないぐらいの人なんだから」
「平川さん、そんなこと仰らないで下さい。もったいないのは私の方なんですから。身勝手で浮気したような女を許してくださるのですから。副島さんのお気持ちに恥ずかしくないようにこれからは努めて行きますから、応援してくださいね」
「美雪、よく言ったわね。えらい・・・副島さんはあなたにお似合いよ。素敵な紳士でおられるし、今は優しくなられたご様子のようだし。お互いの環境が許すようだったらなるべく早くご一緒になられたほうがいいわよ。ねえ、あなた?」
「そうだよ、それこそジューンブライトって言うから、6月にしたらどうだ?」
「平川、早いぞそんなこと言って。美雪さんが困るだろう」
「私は構いませんのよ。もう決めましたから・・・いつでも」
「ほら見ろ!女性は早いんだから、こういう事には」
「あなた、よくご存知ね。私の時も早かったですものね」
「何で今それを話すの?お前が急いでいたからじゃないか!」
「お二人とも、些細なことで喧嘩しないで下さいよ!ジューンブライトにしましょう?副島さん・・・」
「ああ、キミがいいなら、ぼくは喜んで」
「よし!決まった。目出度いぞ。祝い船♪でも唄うか」
平川順次は機嫌よく唄いだした。悦子は恵子が誘っていた6月のハワイ旅行に一緒に行くと良いと思った。向こうで式を挙げれば気兼ねしないで済むし、同行する何人かに祝福してもらえるし。そこに自分と夫がいることも想定した。休みをもらおうと密かに考えていた。
「ねえ、あなたこの後はお二人だけにして、私たちは失礼しましょうよ。美雪構わないかしら?副島さんも?」
「そうだな、副島、そうするといいよ。少しお互いのこと話し合えよ。大人だし後のことは任せるとして、俺たちは先に失礼するよ」
「平川・・・美雪さんはそれでいいですか?」
「副島さん、そうしましょう。お姉さん、気遣いありがとう。美雪は大丈夫ですから・・・このあとご主人とどちらに行かれるのかしら?」
「そうね・・・お楽しみっていう事かしら、フフフ・・・」
「おいおい、副島が本気にするぞ、そんなこと言ったら」
「平川、照れるな!お前だって・・・すみません奥様、失礼なことを言いそうでした」
「ハハハ・・・構いませんのよ。もう年ですから、お考えのような事は・・・しませんもの」
「お姉さん、ウソはいけませんよ。泥棒の始まりって言いますから」
「美雪さん、それは言いすぎですよ。ご冗談でしょうから」
「副島さんって、女性に案外優しいのですね。美雪も楽しみね」
「恥ずかしいですわ。そんなふうに思っていませんから・・・」
「それぐらいにしておこう。悦子行くぞ!」
順次たちが出て行った後に美雪と副島は残された。
「どうします?ここで話します?」
「美雪さんがいいならここで構わないですよ」
「そうね、ムードが無いわね・・・駅前のバーに行きましょうか?お酒飲めますよね?」
「少しはね。そうしましょう」
カラオケを出て駅の方に向かって歩き出した。守口駅の北側へ出たところにバーはあった。土曜日の夜で少し混んではいたが隅にちょうど話しやすいテーブルが一つ空いていた。同じカクテルを注文して、話は子供のことや孫のことなどに移った。
美雪は同じカクテルをお代わりした。副島と居ると安心感が出る。酔っても構わないと思えてきた。
「酔っても構いませんか?ご迷惑ならもう辞めておきますけど・・・」
「そう、気を許していてくれるんですねボクに・・・構いませんよ、酔っても、介抱しますから」
「本当ね・・・知らないわよ」
意味深な言葉を残して飲み始めた美雪であった。
美雪は徹との激しい事があって以来一人で居たから少し寂しい気持ちが出始めていた。目の前に居る副島は今日知り合ったばかりではあったが、とても信頼できる人に感じていたから許しても構わないと思っていた。きっと悦子は自分たちのことに刺激を受けて今夜は仲良くしているに違いないと想像するとお酒の力も相まって体が熱くなってくるのを覚えた。こんな歳なのに恥ずかしいと思うが、自分を抑えられなくなるような気がしている。
「美雪さん、ちょっと飲みすぎですよ。もう辞めましょう」
「副島さん・・・ごめんなさい・・・美雪は嬉しくて飲んでしまったの・・・ねえ?私のこと、好きですか?」
「酔っちゃったなあ・・・ああ、好きだよ」
「本当ですか?嘘じゃないですよね?」
「本当だよ、嘘じゃない」
「じゃあ・・・一人にしないで下さい・・・」
「何を言っているの?もう帰りましょう。タクシー呼びますから」
雑談をしながら話は核心部分へと移ってきた。副島は美雪のことがすっかり気に入ってしまった。なんと言ってもその容姿の若さと色っぽさ、それに物腰の柔らかさ、全てに女を強く感じさせられたからだ。美雪は真面目で几帳面な男性だと、今までに交際経験した事がないタイプだったので興味を魅かれていた。一人一曲ずつ歌を披露してよりリラックスしたタイミングで、美雪は聞いた。
「副島さん、亡くなった奥様のこと伺っても宜しいですか?」
「・・・話さないといけませんでしたね。全て私が悪いと思っています。思い出すと辛いのですが、今は許す気持ちになっています。お聞きのことと思いますが、妻は浮気を3年間ほどしておりました。ガンに罹って治療をしないといけなくなってから、別れたようですがその時の気持ちはおそらく病気より辛かったことでしょう」
「副島さん、良くそこまでご理解なされていますね。感心です。もう後はお話なされなくて結構です。美雪は副島さんが必要と考えてくださるのでしたら、喜んでお付き合いさせていただきます。私は自分の身勝手から浮気をして主人と離婚しました。そしてその浮気相手からも酷い仕打ちを受けて・・・」
そこまで話すと、言葉が途切れてしまった。悦子は傍によって肩を抱き、
「もう、話さなくていいの!副島さんにそんなこと言わなくてもいいの!」
二人は互いに嗚咽を漏らし始めた。
どんな辛い事があったのかその様子で副島は想像できた。平川も聞かされていなかった美雪の浮気の部分を知った。
「美雪さん、私でよかったらその悲しみを少し分けてくださいませんか?一緒に泣きましょう。そしてそのあとは喜びを倍にして生きてゆきませんか」
「副島さん・・・ありがとうございます。美雪のこと一生守ってください。お願いします」
「はい、絶対に守ります。もう二度と悲しい思いをさせる事はしません」
悦子と順次は手をたたいて祝福した。こんなに早く二人がお互いを好きになるなんて、きっと我慢していた悲しみが解かり合えたのかも知れない、そう悦子は思った。
悦子は美雪の涙をそっと拭い副島の隣に座らせた。
「副島さん、私からも美雪のこと幸せにして頂けるようにお願いしてもいいですか?」
「俺からもだ!副島、今のお前の言葉はしっかりと耳に残しておくからな」
「はい、誓います。今夜は忘れることが出来ない日になりました。平川のお陰だなあ、本当にありがとう」
「俺じゃないよ、悦子がいてくれたから今があるんだ。礼は悦子に言ってくれ。それと、なんと言っても美雪さんの気持ちに感謝するんだなあ。お前なんかにはもったいないぐらいの人なんだから」
「平川さん、そんなこと仰らないで下さい。もったいないのは私の方なんですから。身勝手で浮気したような女を許してくださるのですから。副島さんのお気持ちに恥ずかしくないようにこれからは努めて行きますから、応援してくださいね」
「美雪、よく言ったわね。えらい・・・副島さんはあなたにお似合いよ。素敵な紳士でおられるし、今は優しくなられたご様子のようだし。お互いの環境が許すようだったらなるべく早くご一緒になられたほうがいいわよ。ねえ、あなた?」
「そうだよ、それこそジューンブライトって言うから、6月にしたらどうだ?」
「平川、早いぞそんなこと言って。美雪さんが困るだろう」
「私は構いませんのよ。もう決めましたから・・・いつでも」
「ほら見ろ!女性は早いんだから、こういう事には」
「あなた、よくご存知ね。私の時も早かったですものね」
「何で今それを話すの?お前が急いでいたからじゃないか!」
「お二人とも、些細なことで喧嘩しないで下さいよ!ジューンブライトにしましょう?副島さん・・・」
「ああ、キミがいいなら、ぼくは喜んで」
「よし!決まった。目出度いぞ。祝い船♪でも唄うか」
平川順次は機嫌よく唄いだした。悦子は恵子が誘っていた6月のハワイ旅行に一緒に行くと良いと思った。向こうで式を挙げれば気兼ねしないで済むし、同行する何人かに祝福してもらえるし。そこに自分と夫がいることも想定した。休みをもらおうと密かに考えていた。
「ねえ、あなたこの後はお二人だけにして、私たちは失礼しましょうよ。美雪構わないかしら?副島さんも?」
「そうだな、副島、そうするといいよ。少しお互いのこと話し合えよ。大人だし後のことは任せるとして、俺たちは先に失礼するよ」
「平川・・・美雪さんはそれでいいですか?」
「副島さん、そうしましょう。お姉さん、気遣いありがとう。美雪は大丈夫ですから・・・このあとご主人とどちらに行かれるのかしら?」
「そうね・・・お楽しみっていう事かしら、フフフ・・・」
「おいおい、副島が本気にするぞ、そんなこと言ったら」
「平川、照れるな!お前だって・・・すみません奥様、失礼なことを言いそうでした」
「ハハハ・・・構いませんのよ。もう年ですから、お考えのような事は・・・しませんもの」
「お姉さん、ウソはいけませんよ。泥棒の始まりって言いますから」
「美雪さん、それは言いすぎですよ。ご冗談でしょうから」
「副島さんって、女性に案外優しいのですね。美雪も楽しみね」
「恥ずかしいですわ。そんなふうに思っていませんから・・・」
「それぐらいにしておこう。悦子行くぞ!」
順次たちが出て行った後に美雪と副島は残された。
「どうします?ここで話します?」
「美雪さんがいいならここで構わないですよ」
「そうね、ムードが無いわね・・・駅前のバーに行きましょうか?お酒飲めますよね?」
「少しはね。そうしましょう」
カラオケを出て駅の方に向かって歩き出した。守口駅の北側へ出たところにバーはあった。土曜日の夜で少し混んではいたが隅にちょうど話しやすいテーブルが一つ空いていた。同じカクテルを注文して、話は子供のことや孫のことなどに移った。
美雪は同じカクテルをお代わりした。副島と居ると安心感が出る。酔っても構わないと思えてきた。
「酔っても構いませんか?ご迷惑ならもう辞めておきますけど・・・」
「そう、気を許していてくれるんですねボクに・・・構いませんよ、酔っても、介抱しますから」
「本当ね・・・知らないわよ」
意味深な言葉を残して飲み始めた美雪であった。
美雪は徹との激しい事があって以来一人で居たから少し寂しい気持ちが出始めていた。目の前に居る副島は今日知り合ったばかりではあったが、とても信頼できる人に感じていたから許しても構わないと思っていた。きっと悦子は自分たちのことに刺激を受けて今夜は仲良くしているに違いないと想像するとお酒の力も相まって体が熱くなってくるのを覚えた。こんな歳なのに恥ずかしいと思うが、自分を抑えられなくなるような気がしている。
「美雪さん、ちょっと飲みすぎですよ。もう辞めましょう」
「副島さん・・・ごめんなさい・・・美雪は嬉しくて飲んでしまったの・・・ねえ?私のこと、好きですか?」
「酔っちゃったなあ・・・ああ、好きだよ」
「本当ですか?嘘じゃないですよね?」
「本当だよ、嘘じゃない」
「じゃあ・・・一人にしないで下さい・・・」
「何を言っているの?もう帰りましょう。タクシー呼びますから」
作品名:「新・シルバーからの恋」 第七章 再婚 作家名:てっしゅう