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愛の深度計

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「どれくらい愛してますか?」
高見沢の場合、それはあまりにも日常の生活からはかけ離れたフレ−ズ。
したがって、文は読めても意味がさっぱりわからない。

「ふ−ん、何だよ、これ?」
榊原はこんな高見沢の問いに、待ってましたとばかりに言葉をほとばらせて来る。

「これの返事、どう書いて良いかわからないんですよ、
お目出度く歳を重ねられて、人生経験豊富な高見沢さんだったら、きっと最高のアドバイスを頂けるかと思いまして、お尋ねしたのですが … 」

この昼休みの貴重な時間に、こんなアホな浮いた話し。
高見沢は興味もなかったし … それに「お目出度く歳を重ねられた」とは何事か。
まるで老いの坂をヨッコラセと乗り越えて来たような言い回しだ。
高見沢は頭に来た。

「あのなあ、榊原、俺は今新聞読んでるんだよ、だから忙しいんだよ、

どれくらい愛してますかってか? 

結構な話しじゃないか、
そんなこと聞いてくれるだけでも感謝して、
素直に、『はい、愛してます』と返事しとけよ」

高見沢はまことにそっけない。
それに対し、榊原が少しムカッと来たようだ。 

「そっかー、高見沢さんて、どれくらい愛してますかなんて聞かれた経験ないんでしょ、
それで明解な答が返って来ないんですよね、

わかりますか、要は、
『どれくらい』というところが … 難しいんですよ」


作品名:愛の深度計 作家名:鮎風 遊