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愛の深度計

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それから月日は流れ、早いもので春光うららかな季節となった。
高見沢の苦労の甲斐もあったのか、やっと愛の深度計の試作品が出来上がった。

こうなってくれば、試してみたい。
早速、愛の深度計をオフィスに持ち込み、業務終了後、榊原に声を掛けてみる。

「遂に愛の深度計が完成したよ、榊原の愛のハートマークがいくつなのか測ってやろうか」
榊原がこんな高見沢の誘いに目を輝かせて来る。

「えっ、そうなんですか、実は最近カミさんから突っつかれてましてね、
あの時、ケイタイで返した5つのハートマークが、本当かどうか証明しろってね、五月蠅いんですよ」

「じゃあ、これちょっと被れよ」と高見沢は言って、電子帽を榊原に渡した。
そして手際よく配線を繋ぎ、測定開始。

「榊原、良かったぞ、お前の奥さんへの愛の深度は … 4レベルだよ」
高見沢は測定結果を笑みを湛えて榊原に伝えた。

だが榊原は、
「えっ! そんなのあり得ないですよ、なんで4レベルしかないんですか、もう1回測って下さいよ」とえらい剣幕で文句を付けて来た。

「そんなの何回測っても一緒だよ、4レベルもありゃ充分だよ」と高見沢は軽く返した。

すると榊原は、
「愛の深度、最高値の5以外は、カミさんにとっては無意味なんですよ、4レベルだなんて言ったら、血を見ますよ、先輩、なんとかして下さいよ」と、もう半泣き状態。

「事実は事実、この結果を粛々と受け止めたら」
高見沢は他人事なのか適当な事を吐いている。


作品名:愛の深度計 作家名:鮎風 遊