顔のない花嫁
The final loop
その日、アレンは夢を見た。
愛する人と結婚式を挙げるそれはそれは幸せな夢。
披露宴は粛々と進行し、いよいよクライマックスとなった。新郎による両親へのあいさつである。
涙を誘う場面だと聞いていたので、何を話すか何日も何日も頭を悩ませ考えてきた。
「おとうさん。おかあさん。アリスをこんなに綺麗に、立派に育ててくれてありがとうございます。そして……こんな貴重な出会いを与えてくれてありがとうございます。ぼくは幸せです。あの時約束しましたが、もう一度言わせてください。アリスは絶対にぼくが幸せにしてみせます。」
自分でも気付かないうちに涙が零れていた。
あーあ……こんな大事な時なのになんでぼくは泣いてるんだー。
でもみんなも泣いていた。お父さんもお母さんもみんな。
大したこと言ってないはずなのに、どうしてこんなにみんな泣いてるんだ。
ぼくはそんな様子がなんだかおかしくって隣に立つ花嫁に笑いかけた。
爽やかな青空の間から差し込む日差しがアリスの顔を照らし出した。
彼女もぼくの笑みに応えて笑いかけてくる。
ああ―ぼくは幸せだ。