顔のない花嫁
夜、アレンはクリスとの待ち合わせ場所のレストランにいた。
すーっと息を吸い込んで気持ちを落ちつける。
粗相を起こしてはいけない。
「今日の夕食は外で食べてくる」そう電話で告げた時のマリアの反応が悪かったのが気になるけれど今はそんなこと気にしていられない。
「おまたせ。結構豪華な店選んだのね」
上品な襟巻を首に巻いた状態でクリスが現れた。
彼女は驚いた様子で周囲を見回し、それからゆっくりとした動作でアレンの向かいに腰を下ろした。
「それじゃ、メニュー決めよっか?」
襟巻を解きながら言うクリス。
アレンはこくりとうなづいて豪華な装飾の施されたメニューを手に取った。