CROSS 第16話 『なぜ、CROSSは潰されないのか?』
犬走椛は、ひとまず、この世界から去ろうと考え始めていた。ミ
サイル攻撃に巻きこまれるかもしれないからだった。気がつけば、
基地には、自分とCROSSの一部しか残っていなかったからだ。
今なら、空母『白鯨』に迎えを頼むことも可能であった。
しかし、そんなときになって、本格的な救出部隊が組まれること
になった。少佐を救出したら、そのままその世界から脱出するとい
う段取りらしく、犬走椛氏はCROSSに、迎えが来てくれないの
で、飛行機に乗せていってくれないかと申し出た。少佐の側近は、
緊急時だからと、渋々認めてくれた。
彼女は、同じ飛行機に乗っている隊員たちにインタビューを始め
た。その中で彼女は、上社氏(本紙のアンケートで、CROSSで
人気ナンバー1のイケメン隊員)との会話が楽しかったと述べてい
る。この話を聞いた私は、犬走椛氏に一言注意した。それは、仕事
に私情を持ち込んではならないということだ。なぜなら、我々マス
コミは、中立を維持しなくてはならない存在であり、どこかの三流
連中(彼らはマスコミとは呼べない)のように、スポンサーのご機
嫌を伺ったり、己の思想のために、報道内容に手を加えたりしては
ならないのだ。私は犬走椛氏に、イケメンから個性的な人物まで、
平等な扱いをするように釘をさした。
さて、難しい話はやめて、楽しいCROSSの話に戻そう。救出
部隊の飛行機が救出地点の上空に到着すると、悪魔連合軍の航空戦
力からの攻撃を受けたらしく、犬走椛氏はそこで大変な目にあった
という。なぜなら、彼女の乗った飛行機が撃墜されたのだ。ただ、
地面に墜落しても爆発は起こらず、彼女は軽傷ですんだという。
しかし、墜落した場所が悪かったのか、彼女がいる飛行機に、悪
魔がやって来たという。その悪魔は、刀を両手に一本ずつ持ってい
る骸骨の悪魔だったらしく、少なくとも、軍人とマスコミなどの非
戦闘員とを区別してくれることはなさそうな感じだったという。
上社氏が、悪魔に鉄砲を撃ち、その悪魔にダメージを与えた。し
かし、与えたダメージは少なかったようで、悪魔は上社氏に反撃し
ようとした。
そこにタイミングよく、魂魄妖夢氏が現れ、その悪魔を倒してく
れたという。少佐たちも遅れて到着し、墜落した飛行機から、無事
な飛行機へと移ることになった。飛行機に隊員たちや戦死者が移動
する間、少佐と魂魄妖夢氏は、いいコンビネーションで、接近して
くる悪魔たちを撃退していたという。
移動が終わると、飛行機は離陸し、急いで霧の上に出た。これで
もう大丈夫だと安心したらしいが、そうは問屋がおろさなかったよ
うで、今度は大きなエイの悪魔がやって来たという。
再び危機に陥ったが、我が国の飛行機が飛んできて、その悪魔を
見事撃墜してくれた。
そして、飛行機は異次元空間に出た。ひとまず、CROSSの特
務艦に向かうことになったのだが、そのとき、飛行機のすぐ近くを
帝国連邦の異次元間弾道ミサイルが通り過ぎていったという。その
ミサイルは、ついさっきまでいた世界を破壊したのだ。
特務艦に着いた犬走椛氏と魂魄妖夢氏は、ブリッジに案内された。
ブリッジでは、少佐と側近たちが、無事を祝って、酒を飲んでいた
という。残念ながら、「機密保護」(そりゃあ、本人たちからすれ
ば「機密」だろうが)だという理由で、撮影はできなかったという。
そのとき、魂魄妖夢氏は、たった今、帝国連邦が異次元間弾道ミ
サイルが使った件について、少佐に質問した。しかし、少佐は、勝
つためには仕方がないという典型的な返答をするだけだったらしい。
その後、犬走椛氏は魂魄妖夢氏とともに、『白鯨』に移動するこ
とになったのだが、飛び立つ前に少佐が迎えの飛行機の中を見学す
ることになった。
機内で、少佐が魂魄妖夢氏から何かを受け取ったそのすぐ後のこ
とだった。魂魄妖夢が少佐を気絶させたのだ。そして、飛行機はす
ぐに飛び立った。窓の外で、CROSSの隊員たちが慌てふためい
ているのが見えたという。(第13話)
作品名:CROSS 第16話 『なぜ、CROSSは潰されないのか?』 作家名:やまさん