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てっしゅう
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「新シルバーからの恋」 第六章 お見合い

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「あらあら、嫉妬されているの?イヤですわ・・・私は気にしませんからご安心なさってくださいね。信用しておりますので」
「では何か・・・お前を信用していないっていう風に取るのか?」
「そうではありませんのよ。お互いに仕事をしているのでお付き合いって言うものがあるでしょ?当然男と女って言う場合だってあるじゃないですか。いちいち気にしていたら、相手に失礼だったりしますよ、そんな気が無いのに。そう思われません?」
「仕事上ではそうかも知れないけど、プライベートではイヤなんだよ、ボクは」
「あなたが好きでいらしてくださることはとても嬉しいのよ。でも、束縛はイヤ。ご心配なさるようなことは決して致しませんから、理解して下さいませんか?」
「悦子・・・解ったからいちいち報告は要らないよ。副島とは明日話してみるよ。近いうちに会おう」
「はい、あなた。強い事言ってゴメンなさいね・・・あなたが好きよ、誰よりも愛していますから・・・」

そっとキスをして、眠りに入った。

副島は名前を行則と言った。三友銀行本店の今は資産運用部付け顧問だが海外転勤の経験もあり、本社トップも経験していた。再雇用扱いとはいえ平川順次よりは格が上になる。同期入社での残り少ない1人であったが、ここのところは妻の死と不倫のことで疲れている様子だった。しばらくが過ぎて順次に心境を打ち明けたところ、心当たりがあるからあってもらえるように話をしようかと尋ねられ、「是非に」と答えていた。

悦子は順次と一緒に副島に会うために梅田まで出かけていった。土曜日の昼間はとても混雑をしていて、約束のホテルのロビーに行くまでは人ごみを掻き分けて歩くような状態だった。

「平川、悪かったなご足労かけさせてしまって・・・奥様もありがとうございます」
「副島、いいんだよ、お前のためになるなら嬉しいのだから。紹介するよ、妻の悦子だ。副島行則くんだ」
「平川の家内です。主人がいつも大変お世話になっております。私も同じ銀行に勤務させて頂き感謝しております」
「副島行則です。奥様が新京橋支店で窓口勤務されていることは聞き及んでいますよ。なんでも初日に3件契約をお取になったとか、評判が聞こえておりましたから」
「それは、どうもありがとうございます。ご紹介させて頂く中山美雪さんのお力だと思っていますから」
「そうでしたか、ご一緒に保険の担当なされているんですね?」
「ええ、大阪生命からの応援ですけど。助かっておりますのよ。お若いし、美人だから・・・ねえ、あなた?」
「そうだな。会えばきっと気に入るよ。今日は妻が少し君の事を聞きたいらしいから、正直に話してくれないか」
「解ったよ。奥様に気に入ってもらえたら、会わせて頂けるっていうことですか?」
「鋭いなあ、相変わらず副島は・・・ハハハ。そう言う事だ」

カフェのテーブルに座って悦子はいろいろと話を聞いた。夫との共通する部分も見えたりして、典型的な仕事人間だったんだと感じた。過去よりもこれからどう過ごすかと言うことが重要なのだから、そこのところを聞いてみた。

「お答えしにくいことをお聞きしますが、亡くなった奥様のこと今はどのように感じておられますか?」
副島はうつむいてしばらく考えている様子だった。順次が、「まだ気持ちの整理がついていないのならそう言えよ。今すぐという話でもないからな」そう助け舟を出した。

「いいんだ、平川・・・気持ちの整理はついているから。本当の事を言うとな、妻のことほとんど知らないんだ。俺の事どう思っていたのかとか、どんなことをして欲しかったのかとか、おれ自身も何をして欲しかったのかとかな。俺は仕事しかしてこなかったから、あいつのことを考えている暇がなかった。恋愛結婚をした訳でもないし、学生時代にいろんな恋をしてきた訳でもない。それはお前も同じだったろう?」
「そうだったな。山登りに行くか勉強していたものな・・・」
「親に勧められて妻とは結婚した。女は家庭で夫の帰りを待つと言うのが当たり前だと考えていたからな。子供が出来たら本当に妻を女と見る事はなかったような気がする・・・」
「副島さん、それは夫も同じでしたよ。私は何年も寂しい思いをして来ました。もう限界に来そうだった時に、あなたの事を聞き夫は変わりました。今は本当にこの人で良かったと思っています。中山美雪さんがあなたのことをそう思えるようなら幸せになれますでしょうし、思えないのなら、ご縁はなかったということになるでしょう」
「奥様、そうですね。仰るとおりだと思います。奥様はお優しい方だ。平川にはもったいない・・・」
「おい、それは余計だぞ!・・・まあ、そうかも知れないがな。お前だって中山さんのこと真剣に考えて付き合えばきっと好きになってもらえると思うよ。今のお前なら女心も少しは解かるだろう?」
「ああ、平川に教わるとしようかな。いいですか奥様?」
「この人に教わるって言うのですか?・・・お二人って仲が宜しいのですね。何かあるのかしら?」
「実は・・・冗談ですよ、ハハハ・・・長い付き合いですから、なあ?そうだ、仕事以外に趣味を見つけようと思っているんです。運動はもう無理だから、カラオケとかどうかなあって思っているんですよ」
「カラオケですか・・・いいかも知れませんね。では、次回は美雪さんを呼んで4人でカラオケにしませんか?」

日時を改めて連絡すると告げて、その日は終わった。

伸子から保険契約のことで世話になったとメールが来た。正式に保険証が手元に届いたからだ。悦子はメールで返そうと思ったが、電話を掛けることにした。

「もしもし、伸子、ありがとう、わざわざメールしてくれて。こちらからお礼を言わないといけなかったのに、ゴメンね」
「悦子、いいのよ。友達だもの、気遣いは無用よ。あなたが来た日ね、夜剛司に保険のことで言い合いになって・・・相談せずに加入したって。何でも話して欲しいって言ったから、あなただって徹くんと美雪さんとの事話してくれなかったじゃないの、って言ってやったら、黙っちゃった。もう自分の都合のよいことしか考えていないんだから、イヤになっちゃう・・・」
「喧嘩しないでよ。私の事でなんか・・・伸子も妻になったんだからもっと剛司くんの事気遣ってあげると喜ぶのに。男の人って、単純だから何でも相談するように話すといいのよ。くどいように話すと、もういいから勝手にしろ、ってなるわよ」
「あなた随分変ったね。仕事し始めたからなの?それとも・・・」
「それともだからかも知れない・・・主人には悪いけど」
「あなたが変ったことでご主人も変わって行くのよね。夫婦はお互い様って感じでやって行くような気がする。ねえ?またみんなで会わない?女性だけがいいなあ」
「そうね、そうしましょう。伸子が連絡してよ。気の合う同士でおしゃべりしましょう。じゃあ、これで・・・剛司くんに宜しくね」