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てっしゅう
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「新シルバーからの恋」 第六章 お見合い

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なんとも急な話だ。男の人ってやっぱり寂しがりなんだとこの時に感じた。剛司が伸子と一緒になったのはそうした感情からだったのだろう。

「伸子、保険に入ったのか?」その日帰ってきた剛司はそう聞いた。
「ええ、あなたと結婚したから必要かと思ったのよ。私に万が一のことがあると困るでしょ?」
「そりゃそうだけど、俺に相談無しか?」
「私が入るのよ、構わないじゃないの?受取人はあなたなんだし」
「いや、そういう事じゃないんだよ。何でも話してもらいたいんだよ。一緒に生活をするという事はそういう事だろう?」
「あなただって内緒にしていることあるんじゃないの?徹くんのことだって言わなかったし!同窓会で皆が噂話しているのを聞いて嫌な思いをしたわ」
「それとこれとは違う話だろう?生活のことじゃなくプライベートなことだろう。何でも話せって言うのなら話すけど気分悪くしても知らないぞ」
「美雪さんを嫌いにさせたのはあなたのそう言う所なのよ。解からないの?」
「俺は美雪に嫌な事を言われ続けて我慢してきた側なんだよ。何を解かれって言うんだよ」
「始めから同じ目線で見ていないことなの。男の人って必ず言い聞かせるように話すでしょう?女性はね尋ねるように話すの。答えが返せないような言い方が多いから、女性は黙ってしまうの」
「そうか?結構我儘な事言うぞ、女は・・・許して聞いている男の方がよっぽど寛容だと思うけどな」
「許しているの?余程男性の方が好き勝手しているように思うけど、間違い?」
「そりゃ仕事して稼いでいるから、そうなるよ。逆だったら俺だって我慢するぞ」
「そういう事ね。稼いでいるから黙っておとなしくしていろ、って言うことなのね」
「俺は違うぞ。世の中そういう夫婦が多いっていう事だ」
「だから不倫が多いのよ。何にも男性って解かってない!」
「そこへ話しが行くのか?ビックリだなあ・・・」
「あなたも気をつけないさいよ。私も女なんですから・・・」

剛司は伸子も美雪と同じ人種なのか・・・と悲しくなった。それもこれも保険の契約で家に来た悦子と美雪が原因なんだと思えてきた。

夫から相談されて話さないといけないと思っていた悦子は数日が過ぎた週末の金曜日に美雪を誘った。

「お姉さん、お待たせ。今日はどこにしましょう?せっかくだから・・・素敵な場所がいいわね」
「そうね、夜景が見渡せるホテルの屋上レストランにしましょうか?」
「ウン、素敵だわ。梅田まで出ます?」
「そうね、駅ビルでもいいし、ホテルの最上階でもいいしね」
「電話掛けてみます・・・満席だといけませんから。もしもし・・・これから行きたいのですが二名席が空いていますでしょうか?・・・はい、じゃあ予約お願いします。中山です」
「どうだった?取れた」
「はい、窓側の席で二席大丈夫だって。良かったですね」
「さすがセールスレディね。ちゃんとそういう場所知っているんだ」
「ええ、って言うか・・・言っちゃいますけど、徹さんと行った場所なんですよ」
「そう、ビックリね。思い出の場所って言うわけね?」
「今はそうは思いませんけど、素敵な印象が残っていたからまた行きたいって思っただけです。お姉さんがいやなら辞めておきますけど」
「嫌なんかじゃないわよ。ホテルのレストランに罪はないわ。素敵な場所は誰と行っても素敵な場所なんだし」
「ええ、じゃあ、そうしましょう」

予約した席は夜の大阪市内が一望できる絶景の席だった。
「お姉さん!綺麗ね。良かったわここにして」
「そうね、本当に綺麗!こんな場所があるなんて・・・今度主人を連れてこようかしら」
「あら、お熱いのね・・・フフフ。羨ましいわ、最近のお姉さんを見ていると、恋人気分って感じがするんだもん」
「ちょっとは寂しくなってきたの?一人が」
「こんな時はそう感じるよね・・・でも、もう怖い思いはイヤ!仕事がやっぱり一番だわ」
「ねえ、今からいう事真面目に聞いて欲しいの」
「何?相談事ですか?」
「あなたのことなの」

話すきっかけを掴んで悦子は夫との約束を果たそうとしていた。

運ばれてきたディナーコースに口をつけながら時折飲む赤ワインの味が夜景にマッチして程よく身体を心地よくさせていた。

「主人からね、あなたに是非って頼まれていることがあるのよ。いつだったかしら、私を家まで送ってくれた時に挨拶したでしょう?とても綺麗な人だって感心してたの」
「そうですか。嬉しいです。話ってなんでしょう?」
「会社の同僚で奥様亡くされている方が居て最近再婚を考えてらっしゃるんだとか。あなたのことが頭に浮かんで、それなら一度会わせて貰えないかって頼まれたのよ」
「そうでしたか・・・まだ気持ちは直ぐに再婚したいって思わないんです。夢があるので今は仕事と勉強に集中したいし、時々こうしてお姉さんと食事して楽しい時間があれば不足ないし。無理かなあ・・・」
「そうよね。私でもそう思うから。でも主人にあなたの夢のことを話したら、きっと強い協力者になるぞって言われたの。そうよね、銀行の人だものね」
「協力者?資金の協力が出来るって言う意味でしょうか?」
「多分ね。夫が元銀行員だったらお金も借り易いでしょうし、そうしなくてもすでにたくさんお持ちなのかも知れないしね」
「お金で買われるような気がしてイヤです。自分の力でやって見せますから」
「そういう事を言っているのではないから主人はね。始めに真面目に交際して欲しいという想いがあってからのことなのよ。まあ、どうせ解かるから言っておくけど、その方の奥様、実は不倫をされていたことが、亡くなってから解かったの。そのことで深く反省し、人生をやり直したいって思われたらしいの」
「自分がいけなかったってお知りになられたのね・・・そうでしたか。考えさせられますね。同じような境遇ですものね。解かりました、条件があります。まずお姉さんに会って貰って、間違いないって思えたら、お会いします。いけませんか?」
「ええ、構わないわよ。主人喜ぶわ・・・美雪さん、ありがとう。きっと素敵なご縁になるわよ。そんな気がする」

悦子は帰ってから夫にそのことを話した。飛び上がって喜び、悦子をぎゅっと抱きしめた。「あなた・・・痛いですわ」「すまん、嬉しかったからつい・・・」今夜も求め合う予感がした。

すべてが終わって同じベッドの中で夫と話し始めた。

「美雪さんにね全部お話ししましたよ。その方の奥様が不倫されていたこともね。宜しかったでしょ?」
「ああ、それを承知で会ってくれると言うのだったら、越したこと無いよ。副島って言うんだけど、きっと喜ぶだろうなあ・・・美雪さんって幾つだっけ?」
「2歳下だから・・・58になるわね」
「そうか、なら5歳違いか、副島とは。ちょうどいいくらいだなあ。もっと歳が離れていたら、失礼かなあって考えたりもしたから、ちょうど良かったよ」
「まずは私が会ってお話聞かせて頂くわ。ご一緒されます?」
「もちろんだよ。キミと二人きりになんかさせられないよ」
「大丈夫ですのよ、心配なされなくても。どうせ、副島さんでしたか?私になんか興味ないでしょうから」
「そんな言い方は止せよ。ボク以外の男性と二人きりになるなんて、同級生でもいやだからな」