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ぼくのウルフマン

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 夢の中に入ったような気持ち。不思議だ。ここは一体どこなんだろう。目の前にいるのは奥上?ぼくのウルフマン?狼の頭、そそり立つ耳、鋭い目。尖った鼻先、牙と大きな赤い舌から流れ出る涎。毛深い体と硬い爪、そして欲望を閉じ込めた性器を隠している。
 ウルフマンがアレクスに近づき彼の頬に触れた。
 
「井伏」気がつくと奥上がぼくの頬に触れている。「キスしたい。いい?」
ぼくは声が出ない。彼はウルフマンなんだろうか。じゃあ、ぼくはアレクス。アレクスはウルフマンを拒んだりしない。ぼくは頷いていた。奥上の唇がぼくの口に触れる。そっと軽く。震えている。ウルフマンが震えるなんて。いつも気高く雄々しく怯えたりすることなどない彼が。
奥上の部屋、彼の机の前で立ちすくんで奥上はぼくにキスをして、そしてぼくを抱きしめた。
「この前、来てくれた時、俺のことが好きだって言ったろ。あれは本当?」
奥上の力が強すぎて息ができなくなる。
「おうが、み。力緩めて苦しい」
「ごめ、ん」彼の腕が少し解けて、彼の顔を見ることができた。不安げな表情だ。ぼくも状況が怖くて何も言えない。こんな事初めてだし相手が奥上だなんて。でも彼がウルフマンでぼくがアレクスならこんなにおたおたしてはいない。
「井伏?」
「ほんとだよ。ずっと好きだった」言ってしまった。恥ずかしくなって下を向く。ぼくは奥上から再び抱え込まれて床に押し倒されてしまった。
 体の大きな奥上に押さえつけられてぼくは身動きすらできない。初めて掴まれた時と同じように握られた手首が痛い。アレクスだったら目をつぶってウルフマンのキスを待つんだろうけどぼくは怖くて目を閉じることすらできないでいる。奥上の目は真っ黒で深い闇みたいだ。
 そんなことを思っていたらまた奥上からキスをされた。奥上は何を考えているんだ。本当に突然ぼくが好きになったなんてあるんだろうか。仲の良かった河嶋にふられてぼくを代償に求めてるんだろうか。それでも、いいけど酷く怖い。彼のことを本当にウルフマンだと思おう。
  
 ウルフマンはぼくに口づけをした後、大きな手でぼくの体を撫でていった。背中から脇腹、そしてペニスに触れる。ぼくのそれはもう半分立ちあがっていたのだけど彼の手に掴まれ何度か扱かれてすぐ大きくなった。
「俺のも触って」彼の手に導かれて触ったものはぼくのよりずっと大きくて熱かった。
「しこって」
今まで経験したことのない大きなものを握って扱こうとするが対面してる関係で自分のモノと勝手が違いやりにくい。ウルフマンはぼくの体と並ぶようにして互いのペニスを扱き合った。はあはあという息遣いが激しく、互いの脚が痙攣し合う。そしてウルフマンは身を曲げてぼくのものを口に含んだ。柔らかく熱い感触がぼくを包み込む。彼がこんなことをするなんて思わなかった。
 彼が口を離すと今度はぼくが彼のものを含もうとしたが歯が当たりそうで怖くてできない。仕方なく舐め始めた。自信はないけどこうしたら気持ちいいのかなと思えることをやってみる。凄く下手のはずだったんだけど暫く舐めたり軽く含んだりしているとウルフマンはああっという声を上げてぼくにものを含ませたまま自分の手でものを激しく扱いてぼくの口の中に出してしまった。彼の大きなペニスがどくんどくんと波打ってぼくの口の中で痙攣し、液体が飛び出してきた。あっという間にぼくの口の中が一杯になってしまう。
彼は荒い息の中で「ごめん、井伏。大丈夫?飲み込まないで」と言ってぼくを洗面所に連れて行ってくれた。「出して」ぼくは何となくこういうモノって飲み込むのかなと思っていたのに彼に言われて吐き出した。「危険だから精液を飲んじゃいけないんだって」
「奥上のだったら、飲んでもよかったんだけど」
ぼくがそう言った途端、彼はその場に跪いてぼくのを舐め始めた。ぼくは耐えきれなくなり洗面台の縁に捕まって彼の攻撃を受け止めていた。と言ってもそれは僅かの間にすぎなかったと思う。ぼくはすぐに「駄目。出ちゃうよ」という情けない言葉を発して果ててしまった。彼の口に出してはまずい気がしたのに彼が強くぼくの腰を掴んでいたので外すことができなかった。
「奥上」ぼくは息も絶え絶えになりながら彼と同じ言葉を言おうとしたのに彼の方が先に口を開いた。
「飲んじゃったよ」
そう言うと照れたような顔になって低い声で笑い出した。ぼくもつられて笑ってしまった。ぼくは初めての経験だし、多分大丈夫だと思うけど。
 その後、二人で口を濯いで、奥上がジュースを注いでくれてゲームをしてると彼のお母さんと妹さんが帰ってきた。お母さんは二度目で妹さんは初対面だ。二人共美人でやっぱりほら狼家らしく顔立ちが華やかなんだよね。ぼくは少し恥ずかしくて奥上をちらりと見たら彼もそうみたいで少し赤らんでいたみたいだった。奥上は本当にぼくが好きなのかな。もしそうだったら嬉しいけど。
 
 次の日、学校に行ったら早速丸山に捕まる。はいはい。報告はしますよ。でも恥ずかしいし、奥上の威厳を尊重する範囲内で。ところで奥上はまだ来てないな。
「では、やったとですか」
「やったとです」
何故ここだけ訛るんだ。
「でも奥上がほんとにぼくを好きかは判らないなあ」
「どうして?」
「だって、有り得んでしょ。河嶋とぼくとじゃタイプ違いすぎだもんね。向こうイケメンスポーツマン。奥上がもっと女の子みたいな男子にふられたならばだけど」
「お、案外自分を可愛いと思っとるな、おぬし」
「ち、違うよ」
というとこで担任登場。奥上はここで担任の脇をかい潜るように滑り込んできた。ホームルーム開始。ぼくはちらりと奥上を見る。彼もぼくを見ていた。ふー。
 
 ファンタジーワールドのウルフマンの舞台が何百年も昔の話でなく現代高校になってしまった。あれ、これじゃ妄想なのか現実なのかよく判らないじゃないか。
 ウルフマンは短い休憩の時も昼休みも放課後も機会があればぼくを引っ張って人目を盗んでキスやフェラやシコるのを求めてくる。一方的にじゃなく彼の場合どちらもなんだけど。部活が終わるまで待っててくれない?なんて可愛くおねだりされてぼくはまあ教室でその間かなりイラストや漫画仕上げてるから苦にはならないのだけど。ぼくだったら死ぬほど走った後でまたコシコシってやっぱりウルフマン元気ある。こんなにしててもまだぼくは奥上がぼくのことを好きなのかよく判らない。彼がそういうことを一度も言ってない気もするし。とにかく会えばキス&フェラだから。最初は面白がっていた丸山も段々ぼくと彼の関係に不安を持ち始めて来たようで。「大丈夫かな」なんて言い出す。そしてまた今日も。
「井伏。帰り、待っててくれるか?」奥上の言い方が控えめなんでぼくはどうしても嫌と言えない。
「いいよ」
でもそれだけじゃない。やっぱりぼくは奥上が好きなんだ。皆が帰った部室に連れ込まれて奥上のキスを受ける。彼の手がぼくのを握るとすぐに反応してしまう。
「井伏、可愛い、凄く」耳元で囁かれるとますます固くなってしまう。
「お前さ、前よりもっと感じやすくなってね」
作品名:ぼくのウルフマン 作家名:がお