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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第九回・録】ムカムカパラダイス

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「繰り返さないでください…【時】を」
「な…乾闥婆?;」
京助に抱きついた乾闥婆が静かに言った
「変えてください【時】を…悠助と共に…もうあんな【時】は最後にしてください」
「…それ鳥類…迦楼羅にも言われたような気がする…」
抱きつかれたまま話を聞いていた京助が言った
「【時】の犠牲者は僕等で最後にしたいんです…だから…」
顔を上げた乾闥婆を見た京助が一瞬止まった

『変えてください』

乾闥婆と被って見えたのは黒髪の少女
そして乾闥婆の声と聞いたことのない少し高い少女の声がハモって聞こえた
「…乾闥婆?」
数回瞬きをして目を擦った後京助が目の前にいる人物を確認するかのように呼びかけた
「なんです?」
乾闥婆が返事をするとどこかほっとしたように京助が息を吐いた
「いや…なんでもねぇ」
京助が言った
「京助貴方は今自分に負けています」
京助から離れた乾闥婆が真顔で言った
「慧喜と出会ったときの悠助と同じ…」
「は?」
乾闥婆が京助を真っ直ぐ見る
「悠と…ってどーゆう…」
「心の拠所がない状態です」
京助が聞くと乾闥婆が即答した
「悠助にとっての貴方が今の貴方にとっての緊那羅なんです」
乾闥婆が言う
「あの時の悠助は貴方という存在をなくしたと思って慧喜に心を壊されたの…覚えていますか?」
「…まぁ…うん…」
「今貴方の心を壊すのは簡単ですよ」
乾闥婆がキッパリと言った
「んなコトねぇだろ;」

ゴス

ソレに対し京助が笑いながら返すと思い切り頭にチョップを食らった
「ってぇッ!!;」
「んなことあるから言ってるんです」
少し睨みのきいた笑顔で乾闥婆が言う
「自分の弱さに気づいてください」
乾闥婆が言うと京助が黙った
「弱さとか強さとか…わけわかんなくなってきた」
京助がボソッと言った
「弱くたっていいじゃん強くたっていいじゃん」
さっきより少し大きな声で京助が言う
「強さも弱さも全部ひっくるめての自分だろ」
そして今度ははっきりと聞き取れる声で言った
「受け入れる受け入れないじゃなくてそう見えたらソコは俺の弱さなんだから仕方ねぇじゃん」
乾闥婆がきょとんとした顔をしたまま止まった
「人に言われるがまま自分を直して言ったら俺じゃなくなるじゃん」
京助が言う
「だから俺はコレでいいのだ」
フンっと鼻から息を出した京助を見たまま乾闥婆はまだ止まったままだった
「…ソレが貴方の強さですね…」
小さく乾闥婆が言った
「全てを認めて受け入れる…貴方も悠助も…だから人が集まる」
すっと乾闥婆が立ち上がって窓口へと歩き出しそして
「入ったらどうです?」
そう言いながら窓をガラっと開けた
「鳥類か?」