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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第九回・録】ムカムカパラダイス

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「緊那羅」
名前を呼ばれたのに少し驚いたのか緊那羅がぴくっと肩を少し上げたあと振り向いた
「…鳥倶婆迦…」
わいわいと騒がしい茶の間から一転静かな和室に街灯の明かりか月明かりかそれともその両方の灯りか…そんなほんのりとした明かりに照らされた二つの人影
「おいちゃんはお前のことはよく知らない」
鳥倶婆迦が言う
「でもお前が役目を持ってるのは知ってる」
ずり落ちてきたのか鳥倶婆迦が帽子をくいっと直しながら言った
「おいちゃんの計算ではお前の宝珠に完全に色がつく前に【時】はくるよ」
鳥倶婆迦の言った【時】という言葉に緊那羅が一瞬目を見開いた
「そしてお前は【役目】を果たさないといけないんだよ」
鳥倶婆迦が言う
「それとも…迦楼羅と同じ罪を負う?」
「え…?」
俯いて鳥倶婆迦が小さく言った
「迦楼羅は前の【時】のとき役目を捨てたんだ…そして罪を負った」
鳥倶婆迦がまた帽子を直した
「うん…乾闥婆からきいたっちゃ…でも…」
「おいちゃんも【時】は嫌いだよ」
緊那羅の言葉を鳥倶婆迦がさえぎった
「矜羯羅様も制多迦様もみんなみんな笑わなくなるから」
鳥倶婆迦が言う
「…うん…」
緊那羅が頷く
「おいちゃんはみんなに笑っていて欲しいんだよ」
鳥倶婆迦が言った
「【天】に戻るって言ったけど…それがどういうことかおいちゃん計算してみた」
緊那羅の顔が真顔になった
「緊那羅は気づいてないかもしれないけどお前の存在って凄く大きいんだ…特に京助にとっては」
「私もだっちゃ」
鳥倶婆迦が言うと緊那羅がふっと笑った
「私にとっても京助は大きい存在だから私は【天】に戻るんだっちゃ…守りたいから」
「…いいの?」
鳥倶婆迦が聞くと緊那羅がゆっくり頷いた
「緊那羅が今いなくなったら…」
「大丈夫だっちゃ…すぐ…すぐ戻ってくるっちゃ」
鳥倶婆迦の頭を撫でた緊那羅の腕で腕輪が光る
「だから…それまで京助と悠助を…」
撫でていた緊那羅の手が鳥倶婆迦の頭から離れた
「悠助には慧喜がいるよ」
鳥倶婆迦が緊那羅を見た
「そうだっちゃね」
緊那羅が苦笑いで言った
「朝とか本当寝起き悪いっちゃしすぐ忘れ物するっちゃから…そこらへんもお願いするっちゃ。あ、あと…」
「まだ何かあるの?」
栄野家の日常茶飯事を思い出しながら言う緊那羅に鳥倶婆迦が突っ込む
「いってらっしゃいとおかえりは忘れないで言って上げてほしいっちゃ」
「え…? あ…うん」
緊那羅の言葉に鳥倶婆迦が首をかしげながら返事をすると緊那羅が笑った
「じゃぁ…頼むっちゃ」
「言っていかなくていいの?」
腕を前に伸ばした緊那羅に鳥倶婆迦が聞くと茶の間から京助の馬鹿笑いが聞こえてきた
「…でっかい笑い声だっちゃね」
その笑い声を聞いた緊那羅が苦笑いで溜息をつくと緊那羅の腕が何かにさえぎられたかのように消える
「緊那羅」
部屋に入っていくかのように消えていく緊那羅に鳥倶婆迦が声をかけた
「いってらっしゃい」
鳥倶婆迦が言った