<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)>
「ほら、大当たり」秀美が嬉しそうにささやいた。
良く見ると、その登ってきた大きな身体は、クラスメイトの藤井達郎だった!?
思わず出て行こうとするボクは、強力に腕を引かれて倒れそうになった。
「コラ、一番良いところなんだからもう少し見てようよ」
口調は怒っていたけど、秀美の表情は笑顔だった。
藤井のヤツ、キョロキョロとまわりを見回したケド、何時の間にか島田さんの姿は見えなくなっていたんだ。
でも藤井は、ボク等の居る方にある、石の狐に近寄ると、その横にある小さなほこらに手を突っ込んだ。
「あ! ほこらっていうのはこの事か? じゃあ……」
「そう金石っていうのは、コンの石、コンコンの事よ。やっとわかった?」
その時ボクはなんだか分からないけど、ものすごく感動していた。
でも、藤井は何もみつけられないのか、まだほこらに手を突っ込んでいる。
「ごめんなさい、そこには無いの……」
驚いたことに島田かれんが藤井の直ぐ側に立っていた。
キレイな包みを両手で大事そうに抱いて――。
でも何故? 秀美はまるでこの事までも予想していたみたいだった。
「何故?」ボクはやっと口をきいた。
「あら、憶えてないの? かれんちゃんとは、あたし達小さい頃ここで良くあそんじゃない?」
ボクは声が出なかった。
「小学校に上がる前だけどね。修くんなんか結構、かれんちゃんと仲良しだったわよ。ほらもう一人、チーちゃんだっけ? すごく元気な子」
「小学校が違ったから遊ばなくなっちゃったのね、きっと」
作品名:<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)> 作家名:郷田三郎(G3)