<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)>
ボクは更に絶句つつ、心の中では、でも元気さなら、キミも全然負けてないケドね。と呟いた。
「つまり、神の降りたる白き旗、と、かれんちゃんの名前であたしはピンと来た訳よ。それで古の記憶なら小学校以下の想い出よね。そこで登場するのがクラスの名簿」
うんうん、ボクはもううなずくしかなかった。
「かれんちゃんと同じ小学校の男の子を探したわ。それで一人だけ見つけたのが、あの藤井君……」
「きっと小学校の時から好きだったのね。あたしにはチョットって感じだけど……」
「そう言えば修くんも同じのほほん系だね。仲良しだったわけだ。うふふ」
その一言でボクの悔しさは二倍になった。
でも、少しもイヤな気分じゃなかったんだ……。
いつのまにか島田さんと藤井は何やら楽しそうに話をしていた。
すると突然後ろから声を掛けられた。もちろん、すごく小さな声で。
「あら、あんた達も来てたの?」
神山千里、チーちゃんだった。
「給食の時にね、東城さんが分かった! って言った時は焦ったヨ。計画がオジャンになるかな~なんてネ。ホラ、あの子かわいいのにおとなしいでしょ? だからサ」
ボクには、あの気の強そうな神山が、少し涙ぐんでいる様に見えたのがヒドク意外に思えた……。
「ねぇチーちゃん、修くんはねぇ、小さかったからねぇ、あの頃の事、何にも憶えてないみたいなのよ」
秀美の困り顔がチクリとボクの胸に刺さった。
(おいおい、そんな顔するなよー。ボクだって断片的には憶えてる事だってあるんだゾ)
「えぇ~ウソォ、信じらんない。あたしはてっきりわざと無視してるのかと思ってたヨ。だったらもっと早く声を掛けとけば良かったナ」
そういう神山はホントに残念そうに見えた。
そう言えば、島田さんはもちろん、神山とも殆ど口をきいたことが無かったっけ――。
作品名:<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)> 作家名:郷田三郎(G3)