<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)>
帰り際、秀美が一緒に帰ろうって声をかけて来た。
ボクは早いとこ逃げてしまおうと思ってたのに……。
「ごめんね、まだこの辺の地理に詳しくなくって」
と秀美は言うが嘘だと思った。
GT学園は私立で電車で通ってくるヤツも多いけど、ボクは地元で歩いて通えるし、秀美だって小学校三年まではこの辺りに住んでいたんだ。
ボクは秀美が何か企んでいるなと思ったが素直に言う事を聞くことにした。
例の事件に関係があると思ったからね。
危ない事に秀美は歩きながら例のクラス名簿を見ている。
困ったヤツだ、昔から夢中になると他のことが目に入らなくなっちゃう。
ボクが注意してないと車に曳かれそうだよ。でも――。
「あれ? おかしいよ。秀美ちゃん家は学校を挟んで反対側だろ?」
ボク等はボクの家の方向、つまり秀美の家とは反対方向に歩いていたんだ。
「いいのよ、修くん家の方に行くんだから。修くんだって事件の真相が知りたいんでしょ?」
秀美の奴がいかにも邪魔そうに言うのがメチャ悔しい。
でもヤッパリ事件に関係があったんだな。でも何でボクん家の方に――?
名簿を畳んで仕舞うと、秀美がクルッと振り向いた。
「ところで修くん、日本で神の降りたるって言ったらどこの事だと思う? ロサンジェルスじゃなくってね?」
唐突に聞かれても分からないものは分からない。
「それが分かれば誰も苦労はしないよ」
ボクは少し気分を害してしまった。
「あはは、怒った? ごめんねぇ。でも、ほらココでしょ、やっぱり」
秀美が立ち止まって指差したのはボク等が小さい時によく遊んだ、白幡神社だったんだ……。
「あ、日本で神が降りて来るのは神社かぁ。それで、白き旗が白幡なんだ!」
気が付いてみればすごく単純な答えに、なんかボクは拍子抜けしたような気分だった。
作品名:<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)> 作家名:郷田三郎(G3)