<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)>
「そうだよ。でも何故?」
「別にぃ。可愛いもんねぇ。修くんもあのコの事がが好きなわけ?」
いや~な目つきで秀美が聞いてきた。
クラスは事件で大騒ぎになった。
誰かが先生を呼びに行くと言い出したのを、島田さんが恥ずかしいからやめてと言って止めた。
で、昼休み、委員長の提案によりクラス内で自主的に持ち物検査が行われたんだ。
朝から二時限の終わりまで、クラスには他所からは誰も入らなかったから、クラスの中だけで良いのだそうだ。
検査は一人づつ、机とカバンとロッカーまで調べた。
一応プライバシーってのもあるので、男子は委員長が、女子は神山がチェックして、委員長と神山の持ち物も他の誰かが検査したんだ。
その間中、島田さんは「もういいよぉ、やめよう」と凄くすまなそうにしていた。
ボク等男子にはそんなところも好感度UPの一因なんだって思う。
ボク等のクラスでは神山を筆頭に大概の女子は必要以上にズケズケものを言う傾向があるからね。
もっともそこに秀美が加わったので筆頭が変わる可能性もあるんだけど。
それにしてもボクには、女子はああいう風にコントラストの強い者同士が仲良くなる傾向があるように思えてならない……。
結局何の成果も無く検査は終了してしまった。
島田さんのチョコの行方も、何だかわけのわからない手紙の謎もわからず仕舞いだった。
机をグループでくっつけて、給食の時間になると秀美がボクに聞いてきた。
「ねぇ修くん、あの手紙、どう思う? あたしねぇ、何となく分かっちゃったヨ」
ボクは思わず牛乳を吹き出しそうになった。
「はっきりとは言えないけどね」
思わせぶりな態度にグループの皆が注目した。
「本当に? どういう事なの?」
例の巨漢、藤井までが身をを乗り出して訊いてきた。
「あの文面からすると、チョコを隠したから探せって言ってると思うのよ。問題は隠し場所。神の降りたるってトコよね」
作品名:<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)> 作家名:郷田三郎(G3)