<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)>
こういう時、従姉を学校でどう呼べば良いか……。考えた挙げ句、小さい頃から使っている呼び名にした。
いつから聞いていたのか、まわりから冷やかすような声がいくつも上がった。
「ううん、TVは一度見ただけよ。だからどんなコが出てるのかも良くは知らないわ。でも、原作を向こうで読んだのよ。アレは脚本家のオリジナルって事になってるみたいだケド、明らかにアメリカの有名なティーン向け小説をパクっているわ。まだ日本じゃ翻訳されてないのかも知れないけどね」
あ~、そうなの? でも、ネタバレかよ。
「このハナシはあんまり他人に言わない方が良いぞ。TVがつまらなくなっちゃうからね」
そう言ってマンジーを振りかえると、既にマンジーは他の女子のところで「スゲー」とか「だろー?」なんて自慢げに話しを始めていた。
と、突然、窓側に近い前の方で素っ頓狂な声が上がった。
「え~、かれんチャン、マジ~!? どうしたの……」
後の方は聞き取れなかったが、あの特徴のある声は神山千里に違いなかった。
クラス中が一斉に神山の方を見た。既に何人かはどやどやと神山と島田かれんのまわりに集まっている。
もちろんボクと秀美も駆けつけた。
「どうしたの!?」と誰かが訊く。
おとなしい島田さんの代わりに神山が答えた。
「かれんちゃんのチョコレートが盗まれたみたいなのよ。で、代わりにこんなモノが机に入っていたんだって」
と一枚の紙切れをヒラヒラさせた。
それはキレイにワープロで書かれた犯行声明文とも呼べるものだった。
そしてそれを委員長の青木隆弘が取り上げ、読み上げた。
作品名:<名探偵とうじょう(バレンタイン・ミステリー)> 作家名:郷田三郎(G3)