ヒューマノイド
「ゴロウはホント、憂(う)いヤッチャ!」
思わずこう叫んでしまった高見沢、しかしここは気を落ち着かせ、「まあ、あまり最初からあれもこれもと注文を付けても、ゴロウの脳は混乱するだろうから、簡単なことからやってもらおうか。そうだなあ、明日、朝6時に起こしてくれ」と初命令を発した。
「はい、わかりました」
ゴロウは大きく頷き、後は「明朝6時00分に、目覚ましお手伝い致します」と約束してくれた。
「明日の朝がどうなるかな? これは楽しみだよ」
こうして高見沢は興味津々で、ベッドへと潜り込んだのだった。
翌朝、それは指示通りだった。
ゴロウがやって来て、「一郎様、ただ今6時です、お目覚め下さい」と耳元で囁き、驚かないようにゆっくり揺すって起こしてくれた。
高見沢はゴロウのご主人様を敬う行動を実感し、「4万円で良い買物をしたよなあ」と充分満足なものとなった。
ゴロウとの単身赴任生活、こんな幸先の良いことから幕は切って落とされたのだった。