ヒューマノイド
高見沢が玄関を入ってみると、なにかガチガチと金属がかち合う音が寝室の方から聞こえてくる。そして、「う-ん、う-ん」、そんな女性の喘ぎ声も耳に入ってくる。
高見沢は「なんだろ?」と訝りながら、寝室のドア-を思い切り開けてみた。
「えっ! これって、何だ!」
高見沢は思わず驚きの声を上げてしまった。なんとそこには、高見沢のベッドの中で、ゴロウとメアリ-さんが複雑に絡み合っているではないか。
ゴロウとメアリ-さんも、ご主人様の突然のお帰りで驚いたのか、スットンキョな顔をして高見沢の方をじっと見てくる。
互いに見つめ合ったまま、しばらく沈黙の時間が流れる。
高見沢は、まさかヒュ-マノイドが男女抱擁し合う、そんなことって今まで想像も及ばなかった。まったくのびっくり仰天だ。
こんな現場を見せ付けられて、普段なら「おまえらアホか!」と怒鳴り付けるところだが……。ゴロウとメアリ-さんの瞳を見つめていると、なにか悲しくて、愁いのようなものが漂っている。そのためか、高見沢は何も言葉を発せなかった。
高見沢はこんな遭遇の動揺が少しおさまるのを待って、やっと二人に声を掛ける。
「まあ、いつまでもそんなベッドの中にいないで、その複雑な物理的な絡みをほどいて、二人ともちょっとリビングへ来たら」
「はい、わかりました」
二人とも落ち着きを取り戻したのか、素直に頷いて寝室から出てきた。そして高見沢はゴロウとメアリ-さんをソファ-に座らせ、静かに訊いてみる。
「二人とも、真っ昼間からどうしたんだよ?」
するとゴロウが答える。
「私たち、激しい恋に落ちてしまったのです。結婚したいのです」
横でメアリ-さんがこっくりと可愛らしく頷く。