ヒューマノイド
そんなある夕食時に、高見沢はゴロウに文句を言った。
「こら、朝6時に俺をチャンと起さんとダメじゃないか! 今日は遅刻したぞ!」
「一郎さん、朝、ホント眠いっスよね。……、ずっと寝てたいんです、だから勝手に起きて会社行って下さいよ、後はキチッとやっときますから」
ゴロウが反論してきた。
「何を言ってんだよ、ゴロウ、おまえは俺の召使いだぜ! 最近、朝は起こさんわ、飯作らんわ、洗濯せんわ、掃除はせんわ、……、もっとチャンとやれ!」
高見沢は腹が立ち、思わず怒鳴りつけた。だが、ゴロウは反抗してくる。
「一郎さん、それってロボハラじゃないですか? 水素ボンベだけで、人間の言うこと聞いて生きて行けと言うのですか? ヒュ-マノイドにも人権はありますよ、ロボット虐めで訴えますよ」
「ロボハラって、ロボット・ハラスメントのことか? アホか、おまえの場合は……、就業契約不履行じゃ! 水素ボンベ、1本5千円もするんだぞ、もっとチャンと仕事せい!」
高見沢はもう切れた。
「一郎さん、あまりカッカしないように、コレステロ-ルで頭の腺が切れ易くなっているのですから。ぶっ倒れた一郎さんの面倒みるのは自信ありませんし……、まあお互い人生ゆったりと行きましょうよ」
ゴロウが巫山戯たことをほざく。これに高見沢は開いた口が塞がらない。しかし、ムカッとし、ハズミで「勝手にしろ!」と言い放ってしまった。
この言葉に、ゴロウはニッと笑う。そして待ってましたとばかりの捨てゼルフを吐くのだ。
「じゃあ明日から、召使モ-ドから……、居候モ-ドに切り替えま~す、ヨロチクね」
「このふとどき者めが!」
高見沢はそう叫び、ヤケクソでビ-ルを飲み、寝てしまったのだった。