映画に観るディストピア(世界終焉・人類滅亡)
映画「ザ・ウォーカー」
原題:The Book of Eli
監督:アルバート・ヒューズ、アレン・ヒューズ
製作総指揮:エリック・オルセン、スティーブ・リチャーズ、スザーン・ダウニー
製作:ジョエル・シルバー、アンドリュー・A・コソーブ、ブロデリック・ジョンソン、デンゼル・ワシントン、デビッド・バルデス
脚本:ゲイリー・ウィッター
主演:デンゼル・ワシントン
共演:ゲイリー・オールドマン、ミラ・キュニス、ジェニファー・ビールズ、レイ・スティーブンソン、ネイケル・ガンボン、フランシス・デ・ラ・トゥーア、トム・ウェイツ、マルコム・マクダウェル
原作:
音楽:アッティカス・ロス
米 2010年(日本公開2010年6月19日) 118分
★ストーリー
核戦争により文明が崩壊した未来。世界で一冊だけ残る本を運び、30年間旅をしている男イーライ(デンゼル・ワシントン)。しかし、彼はその目的地を知らない。本に触れる者をためらわずに誰でも殺すイーライだが、彼は旅の目的地を知らない。ひたすら西へ向かう・・・それだけを手掛かりに歩き続けている。ある日、とある小さな町に立ち寄ったイーライ。そこは、本を探し続ける独裁者カーネギー(ゲイリー・オールドマン)という男が独裁者として君臨する町だった・・・。
☆映画総評
なにも予備知識ゼロで観たから、結末と言うか、大ドンデン的状況を楽しむことが出来て、まずは良かったな~と思いました。だから、結構、ネットで調べちゃうと、ネタバレ的な処も多いから、注意して、なんて言っても、ね。私なんかも結構、ネタバレ的なお話しをしちゃうから、ま、お相子(あいこ)ってことで、勘弁して下さい。
しかし、よくあると言うか、なんといっても思い出してしまうのが映画『マッドマックス2』(81)の核戦争後の人類の文明が崩壊した世界観だし、そこに、文明や文化を伝えるべく本の存在が出てくると、そこには映画『華氏451』(66)という監督がフランソワー・トリュフォーなのにイギリス映画と言う、SF未来映画も思い出しちゃいます。そして、実はデンゼル・ワシントンの出世作として有名な映画『マルコムX』の遺伝子を継いだというか、その世界観の延長線上として、映画『ザ・ウォーカー』を観ちゃうと、大変有意義で、奥深いものになるのかもしれません。
そして、なんと言っても、この映画にキャスティングされている俳優陣の構成も、良かったと言うか、SF映画慣れしていると言うか?例えば、一応、映画内では悪役の筈のゲイリー・オールドマンは、映画『フィフス・エレメント』(97)でも未来の地球のコミカルな悪役を演じていたし、他にも宇宙家族ロビンソンを映画化した映画『ロスト・イン・スペース』(98)という作品にでも出ていました。そして、出演リストに、何処に出演するのかとドキドキ・ワクワクした俳優のマルコム・マクダウェルも、SF映画の最高傑作『時計じかけのオレンジ』(71)の主役で、完全に映画小僧どもの脳裏に焼き付いてしまった名優の一人ですから、映画登場シーンに出るまで、まだかまだか!と、そればかりが気になっていたのも事実です。
そんな一癖も二癖もある俳優陣の中、ある意味、使い古された核戦争後の世界、所謂、ディストピア物な物語や映画だと、最後に希望の『エデンの園』的な場所があって、そこに主人公なり関係各者が辿り着いて、めでたしめでたしが圧倒的に多いんだけど、この映画『ウォーカー』は一味違いまして、その辺もイイ意味で期待を裏切ってくれて良かったです。
しかし、映画『マッドマックス2』の世界がアメリカ合衆国全土に広がっちゃって、見渡す限り廃墟の建物や高速道路なり、首都高速道路並みのハイウェイが崩れ落ちていて、やっぱりと言うか、オートバイを乗り回すチンピラどもが、生き残って彷徨(さまよ)っている人々を簡単に殺し回っているシーンは、もろ『マットマックス2』にそっくりだし、デンゼル・ワシントンの無茶苦茶最強伝説は、日本のサブカルチャー漫画の傑作『北斗の拳』のケンシロウ状態です。そして、映画『タンク・ガール』(94)と同じように水は貴重な世界になっています。
核戦争から30年後の世界は、完全にアメリカ合衆国は18世紀か19世紀の西部劇状態に逆戻りし、それもマカロニウエスタン状態のように、残酷で無知無教養で汚くて暴力だけが正義と言う世界を構築していました。だから、人々は水が貴重だから、身体を洗わないので、超臭いし、衛生的にも最低な状態に陥っています。なのに映画だから、みんな元気と言うか、普通に動き回っているのが、ホント信じられません。あの映像の世界観だったら、相当きついウィルスやら病原菌が繁殖していると思われるし、オゾンホールが破壊されたようだから(劇中でデンゼル・ワシントンが話していた)、紫外線の影響で、遺伝子が破壊されて結構な数の奇形な方が産まれたり、と、多い筈(はず)なのに、五体満足で元気はつらつ、な、健康優良児どもばかりですから、そこんとこは「やれやれ」です。
結局は、如何(いか)に広大な広さの破壊尽くされた街並みだったり、映像を観て!見て!なのが、こう言う映画映像を制作するクリエイターの、こんな映像を作りたい、とか映画鑑賞者に観てもらい驚いてもらいたいって感じで、製作がモチベーションなんだろうけど、リアルになればなるほど、なんだか観る側としても、無性に突っ込み処を探したくなるんですね!この手の映画って、ね。映画オープニングから、毛がない奇形な猫を弓で仕留めるデンゼル・ワシントンから始まる訳だけど、この猫を食べたら、身体に良くないんじゃない?なんていきなり突っ込みたくなり、あの弓矢のシーンって、モロ宮崎駿作品『もののけ姫』のアシタカの弓を張るシーンをパクっています。そして、相変わらずリアルな程、なんだよ!それ、と思っちゃうサバイバルシーンの数々に辟易します。そう言えば濡れティッシュみたいなお手拭きで身体を拭くデンゼル・ワシントンのシーンもありました。
作品名:映画に観るディストピア(世界終焉・人類滅亡) 作家名:如月ナツ