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長浜くろべゐ
長浜くろべゐ
novelistID. 29160
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降誕祭の夜

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パパは暫くそうやって微笑んでいたが、急にまじめな顔になって言った。

「パパが何で急に戻ってきたか、不思議だろ?」
「うん、でも生き返ったんじゃ・・ないの?また手違いでさ!」私の淡い希望的観測は、パパの真面目な顔で否定された。分かってたけど・・ね。


「ママを・・迎えに来たんだよ、パパは」
「一緒に行く事になったんだ」

パパの目が真直ぐに私を射った。


「・・怒るか?ヒロシ」
「もう、しょうがないの?変えられないのかな、その予定・・」
「うん、決まった事なんだよ」
「そうなんだ・・・・」

一緒に迎えに行こう・・とパパが言って、私達は夜の街中を車で走り出した。


「母さんも喜ぶね、きっと・・」
「うん、そのために来たんだからね、パパは」

程なく車は施設に着いた。

「あら、武田さん・・またいらしたんですか?」
「はい、ちょっと部屋に忘れ物しちゃって」
「まぁまぁ、お電話頂ければステーションでお預かりしましたのに・・」

「あの、そちらの方は?」
「・・従兄弟です」
私とパパはスリッパに履き替えて廊下を進んだ。

「ちゃんと他人にも見えるんだね、パパ」
「そうさ、今だけ戻ったんだから」

赤や青のLEDライトがちかちか瞬いている背丈ほどのクリスマスツリーが飾られたロビーを横切って、私達は母の部屋の前に立った。
中からは、日中と同じ様な唸り声が小さく聞こえてきた。


「最近の母さんの状態、分かってる?」
「うん、全部知ってる。言ったろ?そのために来たんだって」
「うん・・」私は扉を開けて、ベッドに拘束されている母のもとに行った。
作品名:降誕祭の夜 作家名:長浜くろべゐ