降誕祭の夜
「一体ぜんたい・・どういう事?」
うん、ワケがあるんだよ、色々・・と男性、いや父が俯きながら言った。
「ちょっと・・寒いな、家に入れてくれるか?」
「う、うん、勿論・・・・」幽霊?亡霊なのだろうか、この世のモノではないのだろうか、今ここにいる父は。
でも、ちっとも怖くないのは何故だ?父さん・・だからか?私は家の鍵を開けながら考えた。
どうなっちゃってるんだ?一体・・・・。
「・・変わったんだな、家の中は」
「うん、リフォームしたから」私と父は、先日バリアフリーに改装した玄関からリビングに入った。
「へ~、こんな感じにしたのか、いいな」
気付けば父は私より少し、背が低かった。あれ?父さんはもっと大きかったのに。
「取り敢えず、座って・・・」
「うん」父はソファーに腰掛けて、珍しそうにキョロキョロしていた。
「お茶?コーヒー?」
「コーヒーがいい、済まんな」どういたしまして・・と私はダイニングに行きケトルを火にかけた。
「煙草、吸ってもいいか」
「うん、灰皿そこにあるでしょ?」
暫く湯が湧くまでの間、私は頭の整理に努めようとしたがソファーに座って一服しているのはやっぱり間違いなく、失踪した当時そのままの父さん、いや・・パパだった。
「どう言う事だ?」考えれば考えるほど分からない・・正直、段々怖くなってきた。
私は気が狂ってしまったのだろうか?これは幻なのか?
本当のパパであるはずがない、だって・・生きていたら今頃とうに80歳は超えているはずなのだから。夢・・か?オレは白昼夢を見ているのか?夕べ・・そんなに飲んだっけ?クスリの飲み合わせが悪かったのか?落ち着け、落ち着け・・・・私はバクバクしだした自分の胸に手を置き、深呼吸を繰り返した。でも、その間もパパは物珍しそうにリビングを見渡して煙草を吸いながらソファーに座っていた。